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eponymous verbs(人名が由来となった動詞)|言葉ノート#3-2

〖2024年2月14日更新|未完成〗

あたりは付けたのですが、いかんせん本文がほとんどできあがっていません。ただ、本noteは未完成でも定期的に出すと決めているので、恥をしのんでいったん公開にします。追って更新していきます。

筆者おわび(2024年2月8日)

「(身近な)人名が由来となった動詞(eponymous verbs)」について、前篇(#3-1)に引き続き取り上げていく。詳しい説明は前篇に記載したので参照されたい

ところで、名祖名詞や動詞(句)についての議論は松原(1996)に詳しい。《意味解釈はコンテクストに依存》し、かつ《意味の決定は話者、聴者の協調関係に依存》する限り、《可能な語義数は無限》にある。
※松原和馬(1996)「名祖動詞(句) ー意味の創造ー」、『活水論文集 英米文学・英語学編』[第39集]、活水女子大学・短期大学

生まれては消えていく名祖の中でも、人口に膾炙した語は一般語となり、その一部は辞書に収められるにいたったのだろう。


lynch | lynchen | lyncher | リンチする

macadamise, macadamize | makadamisieren | macadamiser | –

(John Loudon McAdam)が由来。

martinize | – | – | –

mesmerise, mesmerize | mesmerisieren | mesmériser | –

動物磁気の、催眠させる

mercerise, mercerize | merzerisieren | merceriser | –

Morse | – | – | –


モールス信号を送る。Wiktionaryでは頭が小文字の例が紹介されていない。

nicotinize | – | – | –

ニコチン中毒にさせる。

Jean Nicotが由来。

pasteurise, pasteurize | pasteurisieren | pasteuriser | –

prusik | – | – | –

プルージック結び(フリクションヒッチの一種)を作る、またはこれを使って縄を登る(「結ぶ」だけでなく「登る」まで含意する)。

この結びを発明したとされるオーストリアの登山家、カール・プルージック(Karl Prusik)が由来。フリクションヒッチにはたくさんの種類があるが、同結びの基本形であり、登山以外にもさまざまな場面で用いられるためか、管見の限りprusik(動詞)の用例の方が圧倒的に多い。

quisle (quislingise, quislingize) | – | – | –

ritz | – | – | –

これ見よがしに雅やかに振る舞う。

高級ホテル事業で著名なスイス出身の実業家、セザール・リッツ(César Ritz)が由来。彼が興したホテルは現在もロンドン、パリ、マドリードに現存する(ザ・リッツ・カールトンは彼の死後に同名義の商標権を得たアメリカのホテルブランドであり、彼と直接の関係はない)。

なお、ritzen(ドイツ語)は「掻く」という意味の一般動詞。

roentgenise, roentgenize | röntgenisieren | – | –

英語はこれ(roentgenize)よりX-ray(動詞)の方が例が多い印象。ドイツ語はオーストリアのみ。

sandwich | – | – | サンドする, サンドイッチする

salchow | – | – | –

Wiktionary英語版(2024年2月現在)によれば、アクセル(Axel)とルッツ(Lutz)を動詞として用いることが示されていない。


sanforize | – | – | –

– | – | – | サランラップする, ラップする

若年層には死語(後者のみ使う)。

– | schönfinkeln | – | –

silhouette, silhouet | – | silhouetter | –

simonize | – | – | –

socratise, socratize | – | – | –

stent | – | – | –

trudgen | – | – | –

トラジオン泳法(Trudgen stroke)で泳ぐ。

イギリス人、John Trudgen(ジョン・トラジェン)が、南米の原住民の泳ぎ方からヒントを得て、1873年ごろに開発した泳法。現代のクロール泳法が生まれる直前の形態にあたる。

vandyke | – | – | –

– | verballhornen | – | –

– | wulffen | – | –


– | – | – | 八百長する

勝負事などで、事前に勝敗(段取り)を打ち合わせたうえで、真剣勝負を装う。

明治時代の八百屋(=青果店)店主、長兵衛に由来するといわれる(真偽は不明)。通称「八百長」の彼がある相撲の年寄とよく碁をうち、勝てる腕前を持ちながら、巧みにあしらって常に一勝一敗になるように手加減したことから、これを八百長と呼ぶようになった。

参考

余談

flehmen(英、独で動詞)はエポニムではない。

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