SS 洞窟オオカミ 坊ちゃん賞習作用
「マヌルさん、こんにちは」
「コトミさん、いらっしゃい」
人の少女が扉を開けて入ってくる。
「素敵なお店ですね」
「道楽ですよ」
「きれいな宝石が一杯で見ているだけで楽しい」
「そこらの洞窟で拾ってきて磨いてます」
店主はマヌル猫で、いつもぼんやりしている。
「私も洞窟に入っちゃダメですか? 」
コトミは迷い子だ。この宝石街は動物しか住んでいない。人の存在は知っていたが実物を見るのはみんな初めてで驚かれた。
「そうだね、石が欲しいならあげるよ」
「……変な事を言ってごめんなさい」
コトミは店の貴石を見て歩く。店内にはアメジストや水晶やオパールが輝いている。石には力があるので加工すれば、いろいろな用途に使える。マヌルは原石を扱う店で生活していた。
「楽しかったです、また来ますね」
コトミが少しだけさみしそうに店内を出る。彼女は赤いスタールビーをながめていた。また来たら小さい石をあげようと思う。宝石でも傷がついていると価値は下がるが、少しだけ加工してゆがんでいても鑑賞できる石もある。
「コトミが帰って来ない」
「やぁ、ヒマラヤン婦人」
顔の中央が黒いヒマラヤン猫が店に入ってくる。少しだけ歳を重ねているので毛のツヤはないが、その堂々たる毛並みは王族で通用しそうだ。もっともこの街には王族なんて居ないが。彼女はコトミを下宿に住まわせていた。
「まったく人の子はうろうろと動き回るよ、猫みたいに家の中に居ればいいのに」
「まだ子供だからね」
「あんた知らないのかい? 」
「洞窟に興味あったね」
「あんた、危険だと注意しなかったのかい? 」
プリプリと怒るヒマラヤン婦人はマヌルをにらみつける。マヌルは耳をふせながら、よっこいしょと立ち上がる。
「どこに行くんだい? 」
「洞窟にいってみるよ」
「オオカミ居るから注意しなさいよ」
背後で怒っているヒマラヤン婦人を後にして、オオカミかぁと心配になる。オオカミは苦手だ。若いし元気だ。
「オオカミ怖い、オオカミ怖い」
ぶつぶつと言いながら街から出ようとすると、アルマジロがまるまっている。タケダ君だ。
「タケダ君、ちょっと散歩いかないかい? 」
マヌルは一人では怖いのでアルマジロを誘うと「アリがいるか? 」とノリ気だ。
「アリも居るよ」
「なら行く、アリは美味いからな」
道中ずっとアリの話をするアルマジロと一緒に歩いていると洞窟に到着した。
「なんだよ、入り口が崩れてるぞ」
アルマジロが言うとおりに洞窟が岩で埋まっている。コトミは閉じ込められたのか? タケダ君が岩の隙間に長い鼻を入れてつぶやく。
「フンフン、人のにおいがするな」
「ああ困ったな、コトミが心配だ」
「まかせとけ、おれの爪で岩を壊してやる」
長い爪でごりごりと岩を削るとあっという間に岩を壊す。
「タケダ君ありがとう」
「礼はいいからアリはどこだよ」
彼はどんどんと洞窟の中に入る。マヌル猫はふところから蛍石を取り出すと太陽に当てる。太陽に当てる事で光をためて洞窟内で淡く光る。
「オーイ、コトミいるか」
洞窟内は崩れていない、進んでいると大きな広間に出た。光が入っている。上を見ると穴が開いていた。どうやら天井が抜けたらしい。
「マヌルさん」
コトミは男の子と一緒に座っていた。コトミがやさしく抱きしめる人の子は背中に毛がある。
「入り口からでれるよ」
「探してくれたんですね、ありがとう」
「その男の子は誰だい? 」
「洞窟オオカミです」
「帰ろう」
次の日になるとコトミはオオカミの子供と店に来た。
「こんちは……その子は? 」
「洞窟に落ちて、さみしくて洞窟で寝てたら骨にキスしたみたいで……」
恥ずかしそうなコトミは、古代に死んだオオカミを復活させた。
「コトミは俺の嫁だ、手を出すなよ」
マヌルは威嚇する子オオカミを見ながら、やっぱり苦手だなと思う。そう言えばタケダ君はどうしたのだろうか? まだ洞窟でアリを探しているかもしれない。
だめだ普通の話がむずかしすぎるw
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