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SS 秘密警察を宣伝してみる#毎週ショートショートnoteの応募用

「秘密警察を宣伝してみる」
「おいやめとけよ……」
 いつものオカルト同好会のOFF会の席で冗談を言ったつもりだった。陰謀論は昔からある、世界を牛耳ぎゅうじる秘密結社や国の秘密の組織、ネタとしてはありふれている。フリーメイソンや公安特別部隊と同じだ、秘密警察でブログを書こうと考えた。

「秘密警察はマジでやめとけ」
 なぜか周囲から必死に止められた、俺は不思議に感じながらも興味を持つ。もちろん秘密の組織なんてあるわけがない。どんなに秘密にしても漏れてしまう、政治家のスキャンダルが出るのと一緒だ。

「日本の秘密警察は、特高とっこうかな? 」
 戦前と戦中まで存在した、思想犯を探し出して拷問する組織だ。女でさえ素肌にむいたと聞いている。

「どんな気分だったのかな? 」
 平和の国で俺には実感ができない、人を人として扱わない組織。家に戻ると父親と母親が沈痛な顔で居間で座っていた。

「おい、やめとけ」
「そうよ、やめなさい」
 真顔の両親は、微妙に笑っていた。いや徐々に笑い出す。

「あははははっ、やめろ」
「おほほほほっ、秘密警察なんてないわ」

 ゲラゲラと笑い出す両親から逃げるように自分の部屋に入る。この奇妙な出来事をブログに書こう、世間に秘密警察の事を暴露ばくろするんだ。

 OSが立ち上がると壁紙にデカデカと「秘密警察なんてない」と表示されている。俺以外はパスワードを知るわけがない。無視してWEBブラウザを起動する、いつもの検索画面に「秘密警察は検索できません」と表示されていた。俺の何かが壊れた、俺は絶叫しながら液晶画面を殴る。

「暴れないで?」
「どうしたんだ」

 両親が俺を羽交い締めにしてビニール紐で縛る、しばらくすると黄色い救急車が到着する、車の横に秘密警察と書かれていた。俺はもがきながら助けを呼ぶ。

「秘密警察なんて知らない、本当だ! 」

xxx

 俺は戦前に作られた奇妙な地下壕ちかごうに住んでいる、真っ暗だが光る糸が垂れている、洞窟に住んでいる発光するうじだ、粘液が光って見える。それで獲物を捕まえている。

 水は豊富で湧き水が飲めた、たまに食事にありつける。誰かが上から落ちてくるので、それを襲って食べている。俺は体格が良いので、地下に居る連中に勝てた。そいつらの武器を取り上げて、今では俺がボスだ。俺はなぜ生きようとしているか自分でも理解できない、生存本能がそうさせているだけだ。地下には女もいた、地上では味わえない快楽もある、だから俺はここにいる。

 秘密警察が何なのか? 今も判らない……


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