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あいあい傘【#ボケ学会のお題】

 与太郎が傘をもって立っている。近所の熊さんが不思議そうに声をかけた。

「どうした、雨ふってないぞ」
「あいあい傘がしたい」
「なるほど、かわいい娘と傘でしっぽりか」
「熊さんでもいいや、傘に入って」
「おいおい、男同士で入ってどうする」
「熊さんと傘でしっぽり」
「やめてくれ、おれはそっちの気はない」
「実はこの傘はかわいい娘が忘れたものなんだ」
「そうか、また会いたいから目立つように立ってるんだな」
「でも会えない」

 かなしそうな与太郎がかわいそうで熊さんは考えた。傘には屋号が書かれている、どこそこの家の持ち物だと判る仕組みだ。

「どれどれ、文字が書いてあるな、タジマ屋……すぐ近くの呉服問屋だ」
「そこに住んでいるのかな、お嬢さん」
「傘をもってけば判るだろ」

 熊さんと与太郎がタジマ屋に行くと、たしかに家の傘とわかるが娘はいない。

「いませんか」
「ええ、息子は居ます……」

 主人が名前を呼ぶと、奥から振り袖姿の若い男が出てくる。

「あ、これこれ私のです」
「男なんですか」
「ええ、女物の着物が好きで」

 がっかりした与太郎が店を出て行く。

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 熊さんの話を聞いた八さん、笑いをこらえながら続きを聞きたがる。

「それでどうした」
「与太郎かい? 今度は女の格好して立ってるよ」
「なんでそんな事に」
「あいあい傘は、女同士がいいってさ」

#ボケ学会
#雨
#ボケ小説
#落語


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