SS 人形遊び【#合わせ鏡】#青ブラ文学部
おかあさんはいそがしい、だから一人で遊ぶことにしている。リビングでお人形遊びをする。
『おかあさん、おべんとうがないよ』
『おかねを渡すから、かってたべて』
お父さん人形とお母さん人形で、今朝あったことをまねする。
「なにしているの」
「おままごと」
ママは笑いながらキッチンに戻る。お父さんが帰ってくると夕飯で喧嘩を、はじめた。弁当くらい作れ作らない。寝室でも喧嘩をしていた。
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「それでママは、どこに居るわかる?」
「知らないの」
「娘は……その……心が子供のままで」
「そうですか、判りました」
警察官が行方不明の母親の行方を捜しているが、成人した娘は証言が出来ない。父親が犯人なのは判るが証言者がいない。
「良い方法があります」
女性警官が、私を連れてお医者様の診療室で人形を二つ渡される。
「これで遊んでみて」
「わかった」
私は見たことを合わせ鏡のように再現できた。言葉では説明できないが、人形があれば……
『おまえの娘が、あんなだから苦労しているんだ』
『あなたの子でしょ』
『おまえが産んだ、産まなければ良かったんだ』
『あんたは人間じゃないわ』
『おまえがにくい。俺がこんな貧乏なのも……』
お父さん人形の手が、お母さん人形の首を締め上げる。
「もういいわ」
お医者様は、人形治療で有名だったみたい。私は素直にうなずくとお人形を返す。お父さんは、自白した。
私の中の私は、聡明で知的な人格を内包していた。普段は隠れているけど私を助ける時は指示をしてくれる。
「ありがとうね」
(いいのよ、これからは自由、私があなたを幸せにする)
私と私は入れ替わり世界が光輝く。幼い私は心の奥で眠りはじめた。
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