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SS 私の大切な日記 #シロクマ文芸部

 書く時間は一杯ある、日記をつける習慣がついたのは良かった事に感じる。過去を振り返りながら自分は正しかったのか考える。

「魔女、この女は魔女よ! 」
 村人が叫びながら母を批判する。母は薬草で人々を助けた、塗り薬や乾燥させた粉薬を病人に与えた。母は魔女と呼ばれて無残に処刑される。私は母のようになりたくなかった。

 村人は陰険で自分勝手で横暴な人たち。

 誰かを助ければ、別の人に憎まれた。弱い女性や老人を見捨てるのが正義だと感じる人は多い、優遇されていると妄想する。薬を与えるなんて贅沢だ。

「あなたは、人を傷つけないで……」
 母の願いは理想が高すぎる。こんなに邪悪な村人を助ける必要があるの? 処刑された母は焼き殺されながら神に助けを求めていた、私は孤児になると教会で働くことになる。

「神に誓いなさい」

 私は用意周到に演じることにする。敬虔な信者、誰からも憎まれない良い人、ルールを守り、現実を疑わない。教会の細かなおぞましい事は書かない。人の矮小な欲望なんて当たり前の話だ。

 成人して私が信頼を得られる地位になると復讐を開始する。母を告発した聖人気取りの女を悪魔と寝たと罵倒する。誰も私を疑わない。誰かを憎むのは、快楽だからだ、あいつは悪だと決めつけて、自分が正義の味方気取りができる。最高のゲームだ。

 母を傷つけた全員を拷問で苦しませた。こんな楽しい事はやめられない。

 いつしか村人が私を疑う。私の悪い噂を流して排除しようと画策するが、先回りをして処刑した。人が権力を持ちたい理由がわかる、自分の望みがかなうのだ。

「あの女は魔女です」

 一人の少女が私を指さす、母を亡くした少女。私は静かに笑っていた、都市の魔女審問官が呼ばれて私の処刑が決まる、牢獄の中で日記をつけながら私は間違ってないとつぶやく。

「処刑の時間だ」

 私は日記を胸に抱いて村人が集まる処刑台に進む。憎悪の目を向ける彼らが私を罰する事に正義を感じている、最高の気分だ。

「あなたたちは、私と一緒よ」

 私は死ぬときに神に祈らない、地獄の悪魔は私を許してくれる……


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