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SS うちのタマのあだ名はクラッシャーという。 #ストーリの種
うちのタマのあだ名はクラッシャーという。とにかく破壊する、私の大事にしていた人形を食いちぎって泣いた事もある。いつもは凶暴じゃなくて、ムシャクシャしている時に壊す感じだ。
「タマをよそにあげてよ」
母親に泣いて頼んだこともあるが、母は静かに笑っているだけだった。普段は、なでさせてくれるがクラッシャー状態だと触れるのは怖い。とにかく素早く動いて標的を見つけて破壊する。お前はゴルゴか。
「ゴルゴは狙撃銃で倒すんだぞ」
父親が物知り顔で訂正するが、そんな事は判ってる。それにゴルゴは格闘も強いよと突っ込むと父親は「お前はおっさんか」と笑う。それくらいにタマは、とても強い猫だった。
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「内臓を悪くしてますね、長生きできません」
獣医で宣言される。ペットケースに入れて家に運びながら、とても長生きなのねと泣きそうになる。タマが好きだった、タマ……タマ……とつぶやいていると、タマが鳴く。
「なに? もうちょっとで家だから」
立ち止まると道路に段ボール箱が置いてある。捨て猫の箱だ、いまどき生物を捨てるのは犯罪と思うが、近寄ると子猫が入っている。もう動かない、死んでいるかと思うと怖くて触れない。
「ニャーニャー」
「なに? 連れて帰るの?」
私はまだ暖かい子猫を片手ですくって、タマのケースに入れる。ペロペロと子猫をなめているタマは満足げだ。生物の本能だ、子供を助けたいと願う、私は涙があふれる。寿命がないタマは子猫を助けたかった。
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子猫は家で飼うことにした、タマの代わりだ。何日か経過するとタマは眠るように死んでいた。ペット用のお墓で供養すると、タマの代わりの猫が暴れるようになる、名前はタマにしている。
「まるで前のタマみたいね」
子猫はぴょんぴょん跳び回ると私の携帯をくわえてぶん投げた。
「なにすんのもう!」
携帯は壊れていた、せっかく助けたのにひどい仕打ちだ。私は初めて出来た彼氏と連絡が出来ない事に怒る。新しいタマは私の顔をじっとみている。まるで意思があるかのように見ている。しばらく見つめているとくるっと回り新しいタマは部屋を出た。
「何なの……」
「ああ、あんたその彼氏とはやめときな」
祖母が見ていたのか、説明してくれる。祖母はこの家には式神様が住んでいると教えてくれた。動物を使役する式神様は、飼われているペットを使い人間に意思を伝える。
「壊された物は、よくないものだよ」
障る物、祟る物、よくない者、タマは常に破壊して守ってくれた。新しいタマはその役割を引き継いだ。
私は彼氏と連絡を取らないことに決めた、しばらくしてから彼は警察に手配された。彼と関係している女性も行方不明に……
タマは今日も元気だ。
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