創作民話 死神の駕籠

俺は不貞腐れていた。当たり前だ、ろくな相棒が居ない。
この前は非力な野郎が相方だ
力がねえもんだからふらふらふらふら危なくて仕方が無い
客は文句を言って歩いて帰ってしまう
駄賃もでねぇ
親方に相方を頼んでも
経験の無い奴しか紹介されない
このままだと食いっぱぐれだと悲観をしていたら、
人相の悪そうな男が近寄ってきた
「駕籠の相棒を探しているのかい」
やけになれなれしいな
うさんくさいが背に腹は代えられない
「相方になるかい?力はあるか?」
その野郎は陰気そうに「経験はあるぜ、客も豊富だ」
生意気な口をきくじゃないか
「それはいいな仕事にいくぜ」
俺は愛想よく上機嫌にふるまったが
なにしろ陰気なやろうだ、どうせその陰気さで
相方が逃げたのだろう
こっちは仕事さえできれば、どうでもいい
空の辻駕籠をかついで客の居そうな場所に移動しよう
陰気な野郎は「俺が前になるぜ」
そうだったこいつは客を知ってるとか言ってたな
まかせることにした
そいつは人の集まりそう場所にはいかず、なぜか
裏道細道すいすいと歩いて、商家の裏に陣取った
「おいこんな場所じゃ客なんざ通らないぞ」
文句を言うと
「すぐに客がくるよ」と平気そうな顔でいう
とすぐに裏の戸口が開いた
これまた陰気そうなじいさんが歩いて出てきて
「川まで」と一言
「へい、長くなりますがよろしいように」
と客を乗せてしまう
川だけで行き先は知っている様子だ
さっそく駕籠をかついで歩き出すと、まるで空のような重さだ
本当に客は乗っているのだろうか?
不信に思いながらも楽でいい
どんどん歩くと人気のない土手にでた
それでも歩いて歩いて日が落ちそうでも歩く
「おい相棒、こんなに遠くまで出向いて戻れるのか」と小声で訪ねる
「大丈夫だ帰らないからな」
そこで気がついた、俺は昨夜のうちに死んでいた。
賭博場で暴れて殴られてそのまま逝った。
幽霊になっても習慣で駕籠置き場で待っていた。
それを死神が見つけたのだろう
死神は「どうだこのまま相棒にならないか」と
ニヤリと笑う。

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