見出し画像

SS 思い出ストレート #爪毛の挑戦状

※注意 出禁ネタなので、危険と判断したら読むのを止めて下さい。

俺の能力は【思い出ストレート】。敵に精神的なダメージを与えられる。
「お前は女に振られた!」
剣士の頭の中に鮮明なイメージが投影される。友達の妹を紹介されて何回か食事に行くと好きになる。調子に乗って告白すると冷たい目で見られた。凍るような声で「無理です」。剣士は動けない。瞬きする時間でも良い、行動抑制できれば勝てる。俺は剣士を刺し殺す。

小国に生まれた俺は貧乏な商家の倅だ。つまらない商品管理をする毎日で飽きていた。自分の能力が気がついたのは子供の頃。口げんかでは負けない。俺は相手の急所を突く言葉が得意だ。

「それはあなたの思い込みですよね」

相手が賢明に説明しているのに感想扱いをされたら対話なんできない。相手は黙る。外野から見れば俺が勝利したように見える。俺が正論で相手が黙るように見える。実際はイメージを投影している。『お前の考えはお前だけのもので共有できない』相手は拒否されている映像が頭に入ると萎えてしまう。

理屈なんてどうでも良い。相手を黙らせれば良い。

自分は単に相手を言い負かしていると考えていた。だが相手に感想を聞いてみると力として別物だと理解をする。俺は商家をやめると俺の信奉者を集めて辻説法を始める。新興宗教だ。

「神が居るなら出てきて私を説得してください」

もちろん居るわけがない。居ない奴を利用して稼ぐのは悪人だ。俺は神を否定する宗教を始めた。敵が生まれるのは必然だ。俺は狙われたが【思い出ストレート】で常に勝利をした。俺に勝てる宗教家もいない。

今日も辻説法だ、説法をすれば金集まる。楽して暮らせる俺は誰もが羨む。貴族達も俺の話を聞きたがるし、俺を利用して大衆に媚を売ろうとした。俺はそれを笑いながらも利用した。

「貴族がいるから私たちは気楽に暮らせるんですよ」

貴族を擁護しとけば俺は彼らに恨まれない。適当な理屈でも信者は嬉しがる。階級制度が悪いのは私利私欲で腐敗するためだ。小さな悪事でも積み重なれば全体が淀む。だが淀んだ方が楽しい事もある。俺は信者を騙し続けた。

「でも神様はいると思います」
いつもの辻説法で少女が歩み出る。神を信じる彼女は美しい。俺は彼女を欲しかった。

「あなたは恋人が欲しい!」

【思い出ストレート】を使い洗脳をする。心の弱い相手を騙して言いなりにする。今までも信者の女の子と寝た。俺は自分が神だと信じていた。

「それはあなたの思い込みですよね?」
少女は静かに告げる。俺は焦って色々な言葉で洗脳しようとするが……俺は当たり前の事しか言えない。俺の能力は普通の人が普通に共感できる言葉で騙していただけだ。信念を持つ少女は信念をくつがえす言葉でなければ洗脳されない。宗教家が俺を相手にしないのは、徒労なのを理解していたからだ。

俺は黙る。回りの奴らは熱が冷めたように俺を見ながら立ち去る。背後から殺気を感じる。何名かの男達が剣を向けた。俺は男達に【思い出ストレート】を使うが、彼らは外国人だ。

終わり

画像1



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?