SS 呪いの魔女【可愛い子には変化をさせよ】#毎週ショートショートnoteの応募用
「そのお姫様に呪いをかけるよ、ヒヒヒヒッ」
針のように尖った指先から呪詛があふれると、十五歳の姫は、ふためと見られない恐ろしい顔になる。姫の誕生日パーティの日に突然あらわれた魔女は黒いマントを翻して闇に消えた。
「なんて恐ろしい」
「かわいそうな娘」
王様と王女様が姫を慰めるが、その顔を見ると抱きしめようとした腕が止まる。
「恐ろしい呪いだ、塔に閉じ込めよ!」
父母も家臣も姫を見る事ができない、閉じ込められた姫は、何も変わっていない自分に気がつく。
(そんなに、コワイかしら?)
粗末な部屋にも鏡がある、自分の顔を見ると確かに醜悪だが、ちょっとかわいい部分もある。姫は悲しみもせずに、部屋で編み物をしたり本を読む。
その間に、小国の姫の国は大国に滅ぼされた。戦火の中に塔に入った敵国の兵隊は、姫を見るなり逃げ帰る。恐ろしさで殺す事もできない。
「お前がこの国の姫か!」
最後に塔におとずれたのは、敵国の王子。その顔は醜い傷で一杯だった。顔は切り刻まれて鼻もなく、顎も半分しかない。
「はい、そうです」
「これは……美しい、妻になってください」
「私は醜いですよ?」
「いえ、その目が、心がとても清らかに見えます」
心の清らかさを認められた姫の呪いは、その時に消えた。たおやかな一輪の白い花のような姫と王子が抱き合いキスする。
水晶玉を見ながら魔女はにんまりと笑う。
「可愛い子には変化をさせよ、国が滅ぼされたらお姫さんが敵国の兵隊に乱暴されるからね、ヒヒヒヒッ」
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