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ケルトの魔弾 #逆噴射小説大賞2023参加作品

題名:ケルトの魔弾

 妹が殺されたのはハロウィンの夜、裸体の腹がさかれていた。額にはケルト文字で呪いときざまれている。私は成人すると警察に入隊した。

「……タイキ……セヨ……」

 骨伝導イヤホンマイクは聞き取りにくい。警察用の簡易エスペラントでも、ノイズで消えそうだ。

 足下に小指ほどの火蜥蜴が私の落としたタバコの火を吸っている。大きくなれば厄介だが、今は見逃す。

(ハロウィンの夜よ、魔物の力が増してるわ)

 肩に小さくのっているケットシーは、まだ幼いから簡単な仕事しか出来ない。私の血を与える事で使役できる。

 リボルバーを抜いて弾丸を確かめた。

「硫酸弾にするかな」

 支給されている銀コートの弾丸では効果が出ない。だから自前で作る。簡単な器具でハンドロードできるし、弾にケルト文字で護符を入れる。

 髪が長く邪魔で美容院に行こうかなと思うが時間が足りない。
 硫黄と吐瀉物の臭いが充満する一角で、私は待機を続ける。眼前のドアの横に、バンシーが立っていた。彼女は死人が出ると現れる魔物だが、今は受肉して気配をうかがっている。

「……ト……ツニュウ」

 私は飛び出して消火栓の所まで走る。バンシーに拳銃を突きつけて、注意をひきつけた。予想外なのは援護射撃が来ない事だ。
(何してるの、早く撃って)

「……エンゴ……ゼンメツ……」

 人を襲った魔物は周囲に展開しているの? 疑問を感じながらも、リボルバーでバンシーの頭を撃ち抜く。硫酸弾を三発、頭部にぶちこむと、焼けただれた、においとともに頭部が破裂する。凶悪なダムダム弾は受肉した体を破壊した。

(……家の中にもいるわ)

 ケットシーがひそひそと教えてくれる。拳銃の照星が黄色から赤に変わる。強敵がいる。

 私は突入するためにドアに近づく、中で悲鳴が聞こえた。スチール製の拳銃は重く冷たい、私はドアを薄く開けて侵入する。

続く


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