SS 冷宮【秋が好き】 #シロクマ文芸部
秋が好きなのは、私が秋華だから。姉は春華、紫禁城で行方不明になり探しに来た。
宮廷に広がる池を見ながらため息が出る。姉は冷宮に、いる事が判る。ここは、冷遇された姫が来る場所だ。
池は広く蓮がおおっている、秋の空を見ながら私は心を休める。美人の姉は、親戚から金を持たされて紫禁城に入ったが王から寵愛されなかった。戻ってくるように手紙を出したが音沙汰が無い。
「秋華、もう寒いから部屋に戻ろう」
「妙光、もう少しだけ……」
彼は宦官で、男ではない。美男子なのにもったいないと思うが出世のために切り落とす人も居る。心配そうな彼を見送ると池の方で声がする。
「早く逃げなさい」
懐かしい声に驚きながら池を見ると姉が悲しげに、たたずんでいる。
「姉さん……」
「私は宦官の王榮に責め殺されました、早く逃げて……」
幽霊になった姉が必死に逃がそうとする、なごりおしいが姉を助けられない。私はきびすを返すと妙光が待っている宮殿を目指す。
「本当に姉そっくりだな、お前もコレで責めてやろう! 」
宦官の王榮が、その太った体で手下を数人ひきつれて目の前に現れた。象牙で出来たイヤラシイものを、私に突きつける。
「よくも、姉さんを! 」
「秋華! 」
宦官の妙光が助けに来てくれた。私をかばうように前に立ち叫ぶ
「私の顔を見忘れたか! 」
「は! あなたは皇帝の弟君」
手下がざわつくと、宦官の王榮が怒ったように手下に命令する。
「皇帝の弟が冷宮に来るわけない! 殺せ」
手下は命令通りに柳葉刀を抜くと襲いかかる、いけない妙光が死んでしまう。
私は宮廷服を脱ぎ捨てると、いつも身につけてる道着になる。閃光一閃、抜き手で手下の喉を突き破る。驚いている宦官の王榮に、必殺の金剛羅漢最終奥義を叩きつける。
「阿吽電光拳!! 」
吹っ飛ぶ王榮を見て姉の敵が討てたと私は泣いた。
「もう大丈夫だ、君は強い、妻になってくれ」
「はぃ……姉の分も幸せになりたいです」
彼は姉が好きで心配していた、妹の私が探しに来た事で宦官に化けて守っていた。
皇帝の弟の妙光は、私をやさしく抱きしめて口づけを交わす。秋の紫禁城の日差しは暖かく、池のほとりで姉の春華は、笑いながら手をふっている。
「幸せになってねぇ! 」
終劇
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