二十字小説 怪談二作目 #小牧幸助文学賞参加作品
一
遠く霞む果てない地下の湖を足一本で歩む。
二
ああ、と声を出したいが口がない幼い少女。
三
まぶたを縫いながら楽しそうに手探りの妻。
四
とても明るい光の前で立つ君は体から蒸気。
五
暗い部屋で、ぼそりとつぶやく腕の人面瘡。
六
くねるように踊る彼女は手足の関節が多い。
七
深い森を歩きながら手足からヒルが落ちる。
八
深夜のマネキンが巡回中の僕に色目を使う。
九
部屋を暗くすると手が現れて電気をつける。
十
果てなく文字を打ち、誰にも読まれない話。
#シロクマ文芸部