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雑多な怪談の話

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雑多な怪談話を入れます 写真は https://www.pakutaso.com/20170603152post-11830.html を利用しています
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#毎週ショートショートnote

SS 南米での出来事【友情の総重量】#毎週ショートショートnoteの応募用(800文字位)

 いつものように古い喫煙室でタバコを楽しむ。薄暗いランプの下で紫煙で広がる。まるで霧のように漂う中を一人の男が近づく。 「やぁ、調子はどうだい」 「南米の鉄道事業は失敗した」  彼を友人と呼べるなら友人なのかもしれない。たまに金を出して支援してくれるが、金を儲けたいようには見えない。 「今日も、話を聞かせてくれ」 「ああ、そうだな『友情の総重量』の話をしようか……」  自分も下見で南米に行く事はある。やはり眼で見ないと判らない。その時は幼い頃からの友人と南米の奥地に行

怪談 彼の罪 【てるてる坊主のラブレター】#毎週ショートショートnoteの応募用(600文字くらい)

 夕暮れになると弟を思いだす。警察は自殺で処理した。  だから私は復讐する。 xxx 「また死んだよ」  幼なじみの彼氏がうつろな眼をして私を見る。同い年の遊び友達は、みな死んだ。 「どうしてだよ、なんで死ぬんだよ」  死体は異様で頭からシーツをかぶって血まみれになって吊るされていた。警察が警戒していても納屋や庭の木で吊るされた。 「ねぇ、弟が死んでから事件が始まった……」 「……お前の弟は関係ない」  おびえた彼は、飢えた眼で私を見る。生存本能だ、死が近いか

SS お狐娘【祈願上手】#毎週ショートショートnoteの応募用(650文字位)

 たまにお狐娘の長屋に人が来る。父親が易者だったので頼み事をしたい客だ。 「そうですか、お父上はお亡くなりに……」 「私は占いができませんので」  でっぷりと太った男は眼をうつろにさまよわせる。彼は呪われている。 「なんとか助けていただけないでしょうか」 「祈願祈祷したいと?」 「はい」 「これに名前を書いて」  自分の名前を書かせて、それを小さく折りたたむ。それを、別の紙で作った『やっこさん』の中におさめる。 「これを家に置いて、そのまま旅立ちなさい」 「はぁ……

SS 怪談:地下室のみち子【山岳カルマ】#毎週ショートショートnoteの応募用(930文字位)

 暗い山道を三人で歩く。急な登りは通勤列車ばかりの俺にはつらい。 「なぁ、どこに行くんだ」 「みんなの村よ」 「廃村になった……」  村の分校に通っていた。俺たち四人は仲良しで、同じ村に生まれて育ち、幼なじみが死んだ。 「みち子は、まだあそこかな……」  ぞっとするような記憶がよみがえる。 「その話はやめろよ」 「あれは、みち子が悪い」  子供の頃は男女二人ずつでペアのように遊んだ。幼い男女がする事は…… 「思いだしたくない……」 「みち子だけが嫌がってたからな

SS 消えた先生【放課後ランプ】#毎週ショートショートnoteの応募用(400文字位)

 放課後ランプを持って薄暗い階段を降りる。階段の踊り場にある大きな姿見が私をうつす。 「変な顔……」  キャンプ用のLEDランプはミカン色であたたかく感じる。 「なにしてる」 「先生……」  そろそろ定年の担任が私をじっと見ている。 「鏡に興味があるのか」 「別にないです」  数年に一度、学校から女生徒が消える。鏡に吸い込まれたと噂になる。夕暮れで薄暗い時間に誰にも知られずに消える。 「俺も定年で引退だ」 「……さみしくなりますね」 「俺はさみしくないよ」 「そ

SS 孤独な男【花冷え全員集合】 #毎週ショートショートnoteの応募用(440字くらい)

「元恋人が部屋の中に座ってるのですか……怖いですね」 「付き合ったつもりはこちらはなかったんですけどね…」  事故物件、それは前の住人が死亡した賃貸の事である。次に借りる人には告知義務があるが、誰か借りた後ならば必要ない。 「それであなたは事故物件専門に住んでいると……」 「はい……安いので」  花冷えがするのか雨で寒い。陰鬱な青年は憔悴して顔色が悪かった。 「それでどうしたいのですか?」 「早く楽になりたい……」 「引っ越すとか?」 「ついてくるのです」  彼は事

SS 発明品【オバケレインコート】 #毎週ショートショートnoteの応募用(410字くらい)

 博士が透明なレインコートを着ている。その前に一人の記者がメモをとっていた。 「博士、発表されたオバケレインコートとは、どんなものです」 「着るとオバケになります」  記者は質問を重ねた。博士の作った素材で霊界と接触できる。画期的な発明で興奮をした記者は 「死んだ人に会えますか?」 「可能です」  博士と記者がレインコートを着て、墓場に到着するとオバケが居る。 「見えますね」 「レインコートの力です」  博士がオバケに挨拶する、記者も取材できた。死んだ理由やオバケ

SS 夜の公園【三日月ファストパス】 #毎週ショートショートnoteの応募用

 手渡されたのは『三日月ファストパス』と書かれたチラシ。繁華街の雑踏で無意識で手にした。 (三日月があなたを魅了します)  書かれているのは、日時と場所だけで近くの公園だった。 (深夜なのか)  冗談みたいなイベントに興味を持つ。どんなイベントなのか……深夜の公園には、まばらな客がいた。  ギターを持った少女は歌う、魅了された観客は身動きしない。 (悲しい歌だな)  ♪終わる世界はすぐ  ♪だれも気がつがない  ♪平和を愛して  ♪平和になれて  ♪平和を憎む

SS 幻の原住民【蒸し返しダンサーに】 #毎週ショートショートnoteの応募用

 夜の密林で土を踏む。  タンタントン  タントントン  民俗学の資料のために、カメラを回しながら原住民の踊りを記録する。 「これは危険な踊りだ」  頭に羽根飾りをつけた長老が暗い表情を浮かべる。 「この踊りは、なんですか」 「過去を呼び出す踊りだ」  霊を蒸し返すダンサーに誰もが熱狂している。ダンサーは屈強な男達だ。手に槍や斧を持って激しく踊る。  しばらくすると踊りの輪の中央に薄く人影が見えた。彼はカメラで写真を撮っている。周囲のダンサーは、容赦なく彼を攻撃

SS 猫じゃ猫じゃ【突然の猫ミーム】#毎週ショートショートnoteの応募用

「お芝居をはじめるぞ」  小学五年の教室に入ってきたクラス担任が興奮している。 「この動画が面白くてな、猫がでてくる」   (突然の猫ミーム推し?) (なんかズレてるよね) (俺それ知ってる、猫が二本足で飛び回るんだ) (太った猫がおもしれー)  クラスがざわつくと担任が女子生徒の腕をつかんで立ち上がらせた。いきなり女子の両腕をつかんでふりまわす。 「こんな感じで芝居をするんだ」 「先生痛い!」 「なぁ面白いだろ、こうするとまるで……」    担任が無表情に変わり生徒

SS 散歩【レトルト三角関係/魅力的な主人公】#毎週ショートショートnoteの応募用

 いつものように川辺で散歩する。土手の下は石だらけの川原だ、そこで遊んでいる子供達を横目で見ていると、十五くらいの男子が近寄ってくる。学生服を着てる彼は迷子らしい。 「すいません、ここはどこですか」 「どこにいきたいの?」  私の顔を見て少し照れている。自慢じゃないけど私は美人でやさしい。雰囲気がほわんとしている。話しやすいのかもしれない。 「――家に帰りたい……と思う」  さみしげな彼の本心はわからない。家族に会いたいのではなく、不安だから家に帰りたいように思える。

SS 簡単な洞窟【洞窟の奥はお子様ランチ】【冒険小説風】#毎週ショートショートnoteの応募用

「洞窟探検だよ、簡単な洞窟だよ」  顔色の悪い小男が、羊皮紙のような巻物を配っている。大半の冒険者は見て見ぬふりをしていた。簡単な洞窟に入った所で、お宝は安物ばかりだ。 「あの……簡単なんですか?」  見習い冒険者のようだ。金髪の彼は、安い革製の胸当てを装備している。 「簡単なら参加したいです」  隣にいるかわいらしいツインテールの少女は魔法使い。とんがり帽子をかぶって、おすまし気味だ。才能をあふれた彼と彼女は手を握り仲良しに見える、彼らは未来の勇者になりたい。

SS 【行列のできるリモコン】【青春の香る】#毎週ショートショートnoteの応募用

 暗い映画研究の部室で、二人の男子生徒がブラウン管TVの画面を凝視している。 「なぁ、これ……」 「ああ、マジだ」  白黒の映像は、かなり古いのか左右にノイズが盛大に入っている。リモコンでノイズを調整する。 「そのリモコンは?」 「売ってる店で行列のできるリモコン……」 「奇妙なリモンコンだな」 「ここ押すと拡大できるんだ」  よくある汎用リモコンかなと思うが、画面を拡大できる……どんな仕組みなのだろう? 「モザイクも消せるんだ」 「いきなり怪しいな」  しかし、

SS ツノがある東館 【一行目で惹きつける】#毎週ショートショートnoteの応募用

 大腿骨が白く透き通るように美しい。彼女は口の端を曲げて笑う。 「ありがとうな」  xxx  東館にはツノがある、物理的に出ているツノだ。 「このツノを外したいんですね?」 「隣が高層マンションになるので……」  その建物は江戸時代から残っていた蔵だ。もう白くもない漆喰は傷みが激しく、ひび割れている。 『鬼蔵』  近所では有名なツノが生えている蔵だ。鬼瓦でびっしりと装飾されている奇怪な蔵は、遺言で取り壊すな、と厳命されていた。 「費用は?」 「こちらで払うので