怪談 手相を見る女 【#手のひらの恋】#青ブラ文学部
赤い薔薇が庭先に咲いている。それを窓からながめていると村の女が扉を開く。
「――あの魔女さん……見てもらえますか」
「手を見せて」
農作業で荒れた手は美しい、土よごれをラベンターのオイルでふきとり手相を見る。
「あなたが好きな人がいるわ」
「だれです」
「パン屋の息子……」
「ああ……私に興味がないと思ってた」
嬉しそうな彼女は、かわいい恋する乙女、代金にジャガイモを何個かもらう。シチューに入れよう。私は手のひらの恋を見る事ができる魔女だ。村人はそう信じていた。