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雑多な怪談の話

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雑多な怪談話を入れます 写真は https://www.pakutaso.com/20170603152post-11830.html を利用しています
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2024年3月の記事一覧

SS 怪談:深夜のタクシー【#始まりは】 #シロクマ文芸部

 始まりは深夜の怪談の話をふった事…… 「なんか怖い話はないですか」 「怖い話ですか……そうですなぁ」  終電を逃がしてタクシーを探していた時に、都合よく黄色い車体に乗ることができた。くたびれた車に感じるが早く家に帰れることだけで安心する。 「髪の長い女性とか乗りますか?」 「ありますよ、水商売のお客さんとか乗せます」  真面目なのか怪談話に乗ってこない白髪の運転手は前方を凝視しながらハンドルをいきなり切る。 「うわ、どうしました」 「ほら、お客さんです」  前方

怪談 手相を見る女 【#手のひらの恋】#青ブラ文学部

 赤い薔薇が庭先に咲いている。それを窓からながめていると村の女が扉を開く。 「――あの魔女さん……見てもらえますか」 「手を見せて」  農作業で荒れた手は美しい、土よごれをラベンターのオイルでふきとり手相を見る。 「あなたが好きな人がいるわ」 「だれです」 「パン屋の息子……」 「ああ……私に興味がないと思ってた」  嬉しそうな彼女は、かわいい恋する乙女、代金にジャガイモを何個かもらう。シチューに入れよう。私は手のひらの恋を見る事ができる魔女だ。村人はそう信じていた。

SS 赤い爪【#桜色】 #シロクマ文芸部

 桜色の爪が爪紅のように赤く染まる。 「ごめんなさい……かな……」 xxx  こんな話があります……爪の色が変わると死ぬ。都市伝説です。発祥はわかりませんが、小学生中心に女児の間で広がりました。 「爪が紫だと一週間で死ぬんだって」 「黒だと翌日らしいよ」  他愛のない話ですが子供の噂話なんてそんなものでしょう。だから陽子ちゃんも遊びをしただけです。 「なんで給食を食べられないの」 「ごめんなさい」 「あんたのせいで怒られる」 「ごべんなさい」  トイレに連れてい

SS 夜の公園【三日月ファストパス】 #毎週ショートショートnoteの応募用

 手渡されたのは『三日月ファストパス』と書かれたチラシ。繁華街の雑踏で無意識で手にした。 (三日月があなたを魅了します)  書かれているのは、日時と場所だけで近くの公園だった。 (深夜なのか)  冗談みたいなイベントに興味を持つ。どんなイベントなのか……深夜の公園には、まばらな客がいた。  ギターを持った少女は歌う、魅了された観客は身動きしない。 (悲しい歌だな)  ♪終わる世界はすぐ  ♪だれも気がつがない  ♪平和を愛して  ♪平和になれて  ♪平和を憎む

SS 小さなお店【朧月】 #シロクマ文芸部

 朧月のせいか夜の帰り道が暗く感じる。職場の仕事に嫌気を感じているが転職も難しい。 「こんなところあったかな……」    いつもの商店街を通ると、横の細道にネオンが見える。昔はバーがあった場所だ。かすむような、にじむようなネオンにつられて入ってみた。 「いらっしゃい」  やたらと背の高いドレスの女性が壁に背をつけて立っている。腕が太い。男だ。愛想笑いで足早に逃げた。 「なんだ……ここ」  酔客がやたらにいる。フラフラと肩を組んで歩くサラリーマンやきらびやかなドレスを

SS 幻の原住民【蒸し返しダンサーに】 #毎週ショートショートnoteの応募用

 夜の密林で土を踏む。  タンタントン  タントントン  民俗学の資料のために、カメラを回しながら原住民の踊りを記録する。 「これは危険な踊りだ」  頭に羽根飾りをつけた長老が暗い表情を浮かべる。 「この踊りは、なんですか」 「過去を呼び出す踊りだ」  霊を蒸し返すダンサーに誰もが熱狂している。ダンサーは屈強な男達だ。手に槍や斧を持って激しく踊る。  しばらくすると踊りの輪の中央に薄く人影が見えた。彼はカメラで写真を撮っている。周囲のダンサーは、容赦なく彼を攻撃

SS 人形遊び【#合わせ鏡】#青ブラ文学部

 おかあさんはいそがしい、だから一人で遊ぶことにしている。リビングでお人形遊びをする。 『おかあさん、おべんとうがないよ』 『おかねを渡すから、かってたべて』  お父さん人形とお母さん人形で、今朝あったことをまねする。 「なにしているの」 「おままごと」  ママは笑いながらキッチンに戻る。お父さんが帰ってくると夕飯で喧嘩を、はじめた。弁当くらい作れ作らない。寝室でも喧嘩をしていた。 xxx 「それでママは、どこに居るわかる?」 「知らないの」 「娘は……その……心

SS 猫じゃ猫じゃ【突然の猫ミーム】#毎週ショートショートnoteの応募用

「お芝居をはじめるぞ」  小学五年の教室に入ってきたクラス担任が興奮している。 「この動画が面白くてな、猫がでてくる」   (突然の猫ミーム推し?) (なんかズレてるよね) (俺それ知ってる、猫が二本足で飛び回るんだ) (太った猫がおもしれー)  クラスがざわつくと担任が女子生徒の腕をつかんで立ち上がらせた。いきなり女子の両腕をつかんでふりまわす。 「こんな感じで芝居をするんだ」 「先生痛い!」 「なぁ面白いだろ、こうするとまるで……」    担任が無表情に変わり生徒

SS 夜に走る【夜行バスに乗って】豆島圭さん企画参加作品

 夜行バスに乗ると疲労気味の運転手がうつむいていた。バスの運転は激務と聞いている。心配だ。 (事故が起きたら……)  薄暗いバスの通路を歩くと座っている客は外国人が多い。田舎の研修場から都内まで逃げるつもりなのか。  その時に眼のすみに奇妙な人間を感じた。夜行バスのトイレの横の席で、フードをかぶった男? が座っている。外人なのかもしれない。  激安の新宿行きのバスだ。どんな奴が乗っているのか判らない。一番後ろの席に座ると眼をつむる。 xxx 「……サービスエリアに