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雑多な怪談の話

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2023年1月の記事一覧

SS 隣の家まで、一本の蜘蛛の糸が伸びていた。 #ストーリーの種

隣の家まで、一本の蜘蛛の糸が伸びていた。蜘蛛の糸なんてすぐ切れそうなのにしっかり見える。触ってみる。しなやかで弾力はある。そして切れない。 「本当に蜘蛛?」 隣の窓が開くと幼なじみの結菜が顔を出す。 「朝陽なにしているの?速く寝なさい」 黒髪のショートの丸顔だ。狸っぽいと思うが絶対に言わない。殺される。 「いやこの蜘蛛の…」 言わない事にした。些細な事で好奇心を刺激すると結菜が騒ぐかもしれない。俺は判ったとうなずくと窓を閉める。朝起きると、キッチンで朝食を食べる。蜘蛛が天

SS 清水寺の池 【人工知能ネタ】

「まだ寒いか…」 貧乏侍の俺は長屋の連中に頼まれる。池に妖怪が出るから退治をしてくれ。俺は小遣い稼ぎに請け負うが、単なる暇つぶしだ。仕官の道も凡人の俺では無理と判っている。念流を使えるが達人でもない。俺は諦めていた。 まだ冬の季節だ、ただただ枯れススキが生い茂る池の周りは釣り人すら居ない。薄く霧もある、視界の悪い中で俺は木立に背を預けて立っている。長屋の連中は池の蛇が悪さをしていると信じている。いや妖怪のせいにしたいだけかもしれない。 「子供が消えるんですよ」 かどわ

SS 本当は叶ってほしくない願い事がある。 #ストーリーの種

本当は叶ってほしくない願い事がある。彼の幸せだ。彼が幸せになると私が不幸になる。 「別れてくれ」 彼は何回も頭を下げる。離婚してくれ。浮気相手に子供が居る。金は払う。家もやる。俺は家族を持ちたい。お前じゃダメなんだ。 私は泣きもしないで彼を見る。黙って見ている。私を彼は恐ろしそうに見る。最後は怒鳴る。 「お前はいつもそうだ、何も言わない、何を考えているか判らない」 私にも判らない。幸せが何か判らない。彼が怒る理由も判らない、自分がどうしたいのか不明だ。私はきっと他人が幸