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シロクマ文庫用と青ブラ文学部等の企画参加作品

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企画された作品を置いときます
運営しているクリエイター

#青ブラ文学部

SS 約束【#雨の七夕】#青ブラ文学部参加作品(1400文字くらい)

 川が増水したのか水が濁っている。思妤は、ものうげに川面を見つめる。雨の七夕は、湿気も多く憂鬱に感じた。 「思妤、することがないなら針仕事でもしな」 「あぃよ」  ごうつく婆は、遊郭の女が暇そうにしているのが許せない。渭水の対岸は長安で、船で遊びに来る客が多く繁盛していた。 (あいつ来るって言ったのに……)  星宇は、思妤のなじみの客で、牛の売り買いで財をなしていた。若く聡明な彼は、彼女を見受けをすると誓いを立てた。 (嘘の約束なんてしなくても、金もってくれば……)

SS 醜聞【#スキャンダル】#青ブラ文学部参加作品

「いいからパンツ脱げよ」  暗い眼をした少女の前に不良生徒が数人とり囲んでいる。不良生徒の中には女子生徒もいる、残忍な顔をして少女に詰めよる。誰も居ない準備室に転校生を呼び出した。 「お前が悪いんだからね、Aとつきあわないから」 「Aって誰なの?」  憤怒の形相でAが少女の肩をつかんでゆする。 「俺だよ、俺、俺を知らないのか?」 「転校したばかりなの、ごめんさないね」 「Aに謝りなさいよ」 「もう、謝ったわ、ごめんなさいって」  暗く冷たい眼が、威嚇する不良を見つめ

SF いつもの朝【#帰りたい場所】#青ブラ文学部(550文字くらい)

 低くうなる音が聞こえる。ヴーン――ヴーン――ンンン  音が途切れると目覚ましの音がした。 「起きなくちゃ……」  学校に遅れると思って上半身を起こすが、今日は休日だ。いつもの癖で目覚ましのスイッチをONにしていた。キッチンに降りると父と母が深刻そうな顔をしている。 「もうダメなのか……」 「別れましょう」  離婚の話を延々としている、毎日なので飽きないのかな? と思うがいつも母が折れていた。でも今日は違う。母がすっと椅子から立ち上がり父の後ろに回ると手に持っていた