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シロクマ文庫用と青ブラ文学部等の企画参加作品

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企画された作品を置いときます
運営しているクリエイター

#SF

SS 子供の遊び【発砲通報プロ】#毎週ショートショートnoteの応募用(424文字)

 暗い車内で半眼のまま外を見る。交差点の信号機は、青から赤、赤から青と律儀に点灯するが、誰も通らない。 「発砲通報が多いのか?」 「ええ、多いです」  先輩が助手席で缶コーヒーを飲んでいる。どこか遠くで発砲音がした。 「どこですかね?」 「すぐにわかる」  警察無線が現場にむかえとせき立てた。車をまわして到着すると、普通の家だ。リボルバーを出して玄関の呼び鈴を鳴らす。 「通報を受けました」 「誰かいるか?」  どなる先輩は、返事もまたずにドアを蹴やぶる。玄関先で男

SS 天才少女の誤算【復習Tシャツ】#毎週ショートショートnoteの応募用

「助手、復習Tシャツができたぞ」 「はぁ……」  ツインテールの少女が助手の男の子を指さす! 見た目はかわいいが超天才のIQ測定不能の彼女は突飛もない発明が好きだ。 「このTシャツを着ると」 「まだ昼ですよ」  白衣をぬぎぬぎしながらスポーツブラ姿になる。だが本人は気にしていない研究のためなら体も捧げる。 「平気よ、あんた子供でしょ」 「同い年じゃないですか」 「このTシャツはね、なにかの事象が起きた後に結果を記述できるのよ」 「なるほど……わかりません」  真っ白

SF いつもの朝【#帰りたい場所】#青ブラ文学部(550文字くらい)

 低くうなる音が聞こえる。ヴーン――ヴーン――ンンン  音が途切れると目覚ましの音がした。 「起きなくちゃ……」  学校に遅れると思って上半身を起こすが、今日は休日だ。いつもの癖で目覚ましのスイッチをONにしていた。キッチンに降りると父と母が深刻そうな顔をしている。 「もうダメなのか……」 「別れましょう」  離婚の話を延々としている、毎日なので飽きないのかな? と思うがいつも母が折れていた。でも今日は違う。母がすっと椅子から立ち上がり父の後ろに回ると手に持っていた

SS 人の居ない街【#風薫る】 #シロクマ文芸部

 風薫る だれもおらぬ 道を吹く  Λは、無機質な通路をぶらぶらと進みながら、人間に習った俳句を口ずさむ。 (今日は、きゅうりとトマトを植えるかな……)  空気が人間の体感で最適の温度と湿度を保っている。花の香りがするのはΛが花を育てているせいだ。  紫陽花、花菖蒲、薔薇、薫衣草、色とりどりの花は人工で作られた種を利用している。 (人間は何をしたかったのかな……) 「やぁΛ」 「γ、今日は動けそうかい」 「無理だね」 「部品を作ろうか?」 「このままでいいよ」

SS 帰還 【青写真】 #シロクマ文芸部

 青写真が、机に置かれている。 「間取り図ですか」 「かなり古いね」  図面に描かれた線は、輪郭もわからないくらいに古くかすれている。半世紀前の図面から、奇妙な隠し部屋があるとわかる。 「きっとおじいさんの遺産があるんですよ」 「隠し部屋か、ロマンだね」  親戚は興奮で騒いでいるが、弁護士の私は懐疑的だ。 (わざわざ隠す理由がない……)  遺産があるなら私に真っ先に知らされている筈だ。資産家の故人の男性は、何かの特許で財をなした。あり余るほど金はある。 「さっそ