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シロクマ文庫用と青ブラ文学部等の企画参加作品

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企画された作品を置いときます
運営しているクリエイター

#毎週ショートショートnote

SS チワワ殺人事件【バールのようなチワワ】#毎週ショートショートnoteの応募用

 メキシコの古いアパートで男性が死んでいた。死因は頭部の裂傷による出血死だった。  管理人が腐臭に気がつき警察を呼んで部屋に入ると、現場には【チワワ】が散乱していた。警察の鑑識が絶句する。なぜならば、散乱したチワワの体と頭部の傷跡が合致したのだ。 「この男は、チワワで殺されたのか」 「チワワで死ぬなんて……」  チワワ、それは北アメリカ原産のイケニエのための犬だ。もちろん食べたりもした。そんなチワワを凶器に使う犯人はまさに外道!  しかし犯人はすぐ判明する。男性の内縁

SS KSゲーを求めて【無情会館】#毎週ショートショートnoteの応募用

 秋葉原に古い機械を扱うビルがある。 「無情会館にあるかな?」 「あるんじゃね?」  オタクである。リュックを背負った彼らは古いゲームソフトを購入しようと秋葉原にやってきた。ラジオ会館は有名だが、無情会館は知名度が低い。中に入るとPC98用のソフトがずらりと並ぶが、そもそもハードの販売が終わっている。 「ダイナソアとか売ってるね」 「無理無理、3.5インチドライブが壊れてるから使えない」  お目当てのゲーム専用機コーナーに行くとソフトがある。 『プロゴルファー猿』

SS 彼の秘密【非情怪談】#毎週ショートショートnoteの応募用

 暗い部屋の中で障子紙を貼り付けている男がいる。彼は特殊な趣味を持っていた。 「やぁ、まったかい」 「え? まってませんよ」  かわいらしい女性は彼のファンだ、彼はSNSでとてもやさしい物語を作り女性ファンが多かった。  映画を見て食事して女性を誘う。言葉たくみに誘導して自分の家につれていく。古く影のある屋敷だ。 「ぼくのコレクションを見せよう」 「ありがとう」 「実は僕はファンの子からあるものをもらうんだ」 「私からももらうんですか?」  地下への階段は黒く瘴気す

SS 平和の宴【見たことがないスポーツ】#毎週ショートショートnoteの応募用(900文字)

 オリンピックには封印された競技がある……レスリングである。もちろん従来のグレコローマン式やフリースタイルはあるが、封印されたレスリングは別ものだ…… 「テミスト、準備はいいか」 「ああ……平気さ」  テミストの全裸の体はオリーブオイルで輝いていた。腕の力こぶは隆々として肩幅も成人男性の二倍はある。  ギリシアで一番の男、すべての競技で一位をとる英雄。競技場からテミトスを呼ぶホルンの音が響く。暗い控え室の扉が開かれた。 「テミストー」 「ステキよー」  ブロンドの美

SS 夢の国【2cmアパートメント】#毎週ショートショートnoteの応募用

「2cmアパートメント?」  部屋を探していたら変な広告がある。よくある激狭物件だろうか? 激狭はロフトなどで居住空間を増しているデザイン型のアパートだ。間取りが異様で寝る場所が2メートルしかないとか? (誤植なのかな?)  電話して案内をしてもらうと公務員のような男が面接をしたいと役所に呼ばれた。 「これは国家プロジェクトなのです」 「はぁ?」  エネルギー問題で地球が危ない。そのためにエネルギーを使わない国を作れば良い。国は人間の意識を2cmの電脳空間に保存する

SS DTちゃうわ!【リベンジトリートメント】#毎週ショートショートnoteの応募用

 復讐、それは甘美に違いはないが虚無でもある。復讐しても何も変わらない。 「経験ないんだ」 「ないよ」  ギャル風の彼女は俺を真正面から見つめている。彼女は経験豊富でスル事が愛と考えていた。だから愛した。 「じゃあしよ」 「無理」  眉をひそめる彼女は横を向く。怒っている? 嫌いになった? 気分を害していないが戸惑っている。端正な横顔を惹かれるように見つめる。 「なに?」 「いや、かわいいかなと」 「かわいいよ、だからなんで」 「なにが?」 「かわいいならスルでしょ

SS Aの真相【山のポ】#毎週ショートショートnoteの応募用(600文字くらい)

 彼女が死んだ、原因を知りたかった。登山が趣味で俺とAはB子が好きでライバル関係だったがB子に選ばせる暗黙のルールがあると思っていた。 「俺はB子にプロポーズする」 「そうか、頑張れよ」  Aは顔はいいが自意識が高い嫌味なヤツで、B子は俺を選ぶだろうと確信があった。だがB子はAを選び登山の最中に死んだ。 (あいつが殺した、彼女が死ぬわけがない……)  登山のベテランなB子が死んだのはAがヘマして事故に起こしたからだ。真相を知るために失意のAを誘って同じ山を登る事にした

SS 約束【織姫妖怪】#毎週ショートショートnoteの応募用

 暗いお堂の中はひんやりと冷えている。天井には星の配置が描かれているが黒ずんでいてよくわからない。中央に天の川と両脇に彦星と織姫が描かれていた。 「江戸時代くらいですか」 「それより少し前です」  夏の課題で近隣の寺院でレポートを書く事にした。男女の学生は暗さに眼がなれると埃だらけの床板や雑然と置かれた木の箱が散乱している部屋を見回す。 「この地域は織姫伝説があるんです」  天井を指さして男を見る。男は不安げに眼を泳がせる。 「どんな伝説なんです?」 「禁忌の恋物語

SS 彦星のバカンス【彦星誘拐】#毎週ショートショートnoteの応募用

「減光してますね」 「やはり崩壊寸前なのか……」  世界中で彦星(アルタイル)が暗くなるニュースが流れる。天文台や宇宙観測望遠鏡が調査した結果、崩壊すると騒がれた。  そして7月7日、彦星誘拐されたように夏の夜の天空から見えなくなる。 xxx 「あー、彦星ちょっとこい」 「はい、天帝様なんでしょ」 「お前達の夫婦仲がいいが、年一回しか会えないと子供がつくれない」 「私が仕事を怠けたせいです、もうしわけありません」 「ん、だからな今年はしばらく織姫と暮らせ」 「かまわな

SS 子供の遊び【発砲通報プロ】#毎週ショートショートnoteの応募用(424文字)

 暗い車内で半眼のまま外を見る。交差点の信号機は、青から赤、赤から青と律儀に点灯するが、誰も通らない。 「発砲通報が多いのか?」 「ええ、多いです」  先輩が助手席で缶コーヒーを飲んでいる。どこか遠くで発砲音がした。 「どこですかね?」 「すぐにわかる」  警察無線が現場にむかえとせき立てた。車をまわして到着すると、普通の家だ。リボルバーを出して玄関の呼び鈴を鳴らす。 「通報を受けました」 「誰かいるか?」  どなる先輩は、返事もまたずにドアを蹴やぶる。玄関先で男

SS 秘湯【一方通行風呂】#毎週ショートショートnoteの応募用

 ――世界はモノクロだ  ――雨が激しく屋根を叩く  ――うす暗い部屋で身動きをしない  壊れかけた板戸が、ズッズッと動くと男が入ってくる。 「ひどい雨だな」  暗闇にいる私は驚かせないように顔をだす。 「いらっしゃいませ……」 「風呂に入りにきた」 「はい、こちらです」  まずは足湯、ぬるく白く濁った湯で汚れをとる。  砂湯に案内して体を埋める。体の中までじっくりあたたためる。  ――誰もいない小屋  ――ただ静かに客によりそう  ――眼をつむる客は…… 「客

SS 笑った娘【隔週警察】#毎週ショートショートnoteの応募用

 夜のガードレルに女が座っている。誰かを待っているようにも見える。 「おい」 「なに……」  男が近づくと胸ポケットから紙巻きを取り出す。女がマッチをすって火をつけた。 「いつまで続けるんだ」 「説教するなら帰って」 「聞いただけさ」 「いつか終わる……」 「文字通りの意味か」 「……」 「なぁ……」 「今日は非番なの」 「ああ……隔週警察さ……」  深夜に見回り、彼女たちを箱に閉じ込める。そんな仕事だ。 「ねぇ、銃ある?」 「俺にそれを言うのか」 「だって売人のは

SS 天才少女の誤算【復習Tシャツ】#毎週ショートショートnoteの応募用

「助手、復習Tシャツができたぞ」 「はぁ……」  ツインテールの少女が助手の男の子を指さす! 見た目はかわいいが超天才のIQ測定不能の彼女は突飛もない発明が好きだ。 「このTシャツを着ると」 「まだ昼ですよ」  白衣をぬぎぬぎしながらスポーツブラ姿になる。だが本人は気にしていない研究のためなら体も捧げる。 「平気よ、あんた子供でしょ」 「同い年じゃないですか」 「このTシャツはね、なにかの事象が起きた後に結果を記述できるのよ」 「なるほど……わかりません」  真っ白

SS 難易度MAX【奇岩シューズ】#毎週ショートショートnoteの応募用

「この指輪はなんだっけ?」 「溶岩の指輪だ、溶岩ムカデを倒すともらえる。それをつけると溶岩ダメージが軽減される」  実況用のコメントに誰かが答えた。いつものようにゲームを実況しながら配信すると、リスナー(見ている視聴者)が、いろいろとアドバイスしてくれる。 「このブーツなんだっけ?」 「奇岩シューズだ、レアドロップだね」  なんでも聞きながらゲームをしていると、自分で考えない。悪い癖だ、これではリスナーにコントロールされているだけだ。 「よし奇岩城に旅立つぞ」 「やめ