SS 恋人【振り返る】 #シロクマ文芸部
振り返ると桜都が笑っていた。僕は手をあげて桜都と一緒に歩き出す。
「おはよう」
「怜、おはよう」
中学生の僕たちは、たまに一緒に歩く。友達と歩く場合も多いが、二人で歩くときもある。
「怜、恋人はいるの」
「いないよ、いるわけないよ」
桜都のやさしげなクリクリした目と細い顔を見ていると古い本の挿絵のヒロインに似ている。痩せた体は弱く見えるから、余計に保護欲を感じる。
「恋人にならない?」
「別にかまわないよ」
桜都から告白された時に感じたうずくような快感と麻