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修道士が白いチョークでレンガの床に円陣を描いている。 「あと少し、あと少し……」 つぶやく言葉は疲れている。円陣ができあがると文字を描く、ローマの数字や占星術の記号をガリガリと地面にきざむ。 「出来た……」 白い円陣は魔方陣で、悪魔からの自分の身を守るための仕組みだ。彼は羊皮紙を取り出すと古い呪文で悪魔を召喚した。赤黒く床が光ると地獄の門が開き不気味で巨大な顔がゆっくりとせりあがる。 「なにが望みだ」 「俺を未来に連れて行ってくれ」 「変な願いだな」 「俺は…
「あなたたちは選ばれました、それぞれを評価してください」 十数人の男女は初対面だ。椅子がサークルのように丸く並べてあるので、精神的な治療のグループディスカッションにも見える。 「いきなり呼び出されて評価と言われても……」 「そうよ、何を評価すればいいの」 選考をしている人物は穏やかに答えた。 「あなたたちは、小説に応募をしました」 「ええそうよ、呼び出されたので受賞かと……」 「ですから、小説を応募した人が評価をします」 みなが一瞬だけ絶句すると、応募者がそれ
うだるような四畳半で寝そべりながら、扇風機の生ぬるい風にあたる。 「大家も冷房くらいつけてくれよ」 怪人修行で五年目だ。オーデションに受からない。バイトしながら悪の組織に入るんだと頑張っていた。 「君は特徴ないからね、君はカニ怪人だっけ? 造形がありふれてるからねぇ」 別にカニでもいいだろうと思う。カニ怪人とか子供にも受ける。殻は固いしハサミは格好がいい。スターになれると思った。 「おい、暇か?」 「することない」 相方のテナガエビ怪人がドアを開けて、熱気