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次はあの船に乗りたいんだ、って。

2年間航海していた船から降りました

2022年3月末、2年間航海していた船から降りました。半年くらいで”めまい”がしてきて、下船を試みるもタイミングが合わず。ようやく、です。

”めまい”の原因は海が大荒れだったから、と理由が分かればいいのだけれど、ポンと答えが浮かばないわたしに神様は、ちゃんと自分で反省しなさいと宿題を出してくれたみたいです。

かれこれ数ヶ月”めまい”の原因を考えるのが習慣にもなっていましたが、全く分かりませんでした。ならば放っておこう、と気にしないでいたら出会ったある記事。

下船前の心情がまるっきり書いてあるじゃありませんか。

西村:辞めることを決めたのは、同僚が「辞めまーす!」って言ったときに、「えっ。いや俺も」みたいな感じだった。僕にとっては「もうここにはいられないよなぁ」と充分わかっていたので、そんなに「えいっ!」て感じでもなかったんです。生き様が変わる時って「一歩踏み込む」「足を踏み出す」という出来事として見られやすいんだけど、僕にとっては「これ以上、この鉢の中にいても展開がないからもう出ないと」みたいな感じだった。

ひとまず出るわけですよ。でも、出たからといって、可能性が高まったかどうかはわからない。ただ、少なくともそこはもう、かつて自分が知っていた可能性の低い世界じゃない。

ロケットが燃焼し終えたブースターを切り離した反動のエネルギーで前に進んでいくみたいに、感じている嫌なことをポン!と切り離しながら、感じている素敵なことの方に自分をちょっと向かわせていく。どちらも感じていることを手掛かりにしていますよね。そのときに「こうなれたいいな」という終着地点があるわけではないです。僕の場合はね。

〜デザイナー10年目の探求〜
「自分が喜びを感じることを、仕事に生かすにはどうしたらいいんだろう?」
デザイナー滝田、西村佳哲さんに聞いてもらう(後編)

人生で初めてフルタイムの船員として乗り入れたこの船に乗っていても、行きたい場所には辿り着けないから下船しないと。明けない航海。切迫感を抱いていました。

かといってどんな場所に辿り着きたいのかわからない。そもそも楽しいな、幸せだなって感じたのはいつだったっけ……?

下船日は上司の顔をみて泣いていました。”めまい”に苦しんでいたわたしをいちばん近くで支え見守ってくれた上司。わたしに向けた最後の表情が、今までの悲しみや苦しみ、辛さ、痛みすべてを浄化するほどのエネルギーで。

心の奥底からの声が涙になって溢れてくる。理由はわからないにせよ、2年間ずっと辛かったのには変わりありませんでした。

船着場についたけど、どこへ行きたいのかわからない

下船して完全にフリーな状態になりました。無限に広がっているようにみえる選択肢たちを前に、新しい場所へ向かう気力がありませんでした。

何をすべきかと真っ白なノートに書き綴っていると、全ての選択肢が今後の自分にとって都合が良い、有益になりそうなことばかりになっていて、そっとノートを閉じました。

もう、都合がいいからとか有利だとか、そんな選択をして心の声を潰したくありませんでした。

小さく聞こえてくる声を離さないように、耳をそば立てるようにして数日暮らすと、インドに行ってアーユルヴェーダのデトックスプログラムを経験したいと聞こえてきました。

心から思えたことならば実行すべく、病院にアポをとり、ビザをとり、航空券をとり、数週間後にはインドに。

2年ぶりの海外。パスポートは持ったっけ?陰性証明書がまだ届かないけれど入国できるだろうか?今海外に行っても大丈夫なのか?

不安になったけれど、飛行機から降り立てばすぐに恐怖は消えました。恋焦がれていた海外が目の前にあったからです。

1ヶ月のデトックスプログラムでは、基本が大切だと身にしみて感じました。

太陽とともに生活していれば、身体は元気になる。自然の声を聞いていれば、内側に静寂が生まれる。健康的な食事をしていれば、太ることはない。

どうして基本的なことができなくなってしまうんだろう。太陽を無視してPCにかじりついたり、頭の中の妄想を拡張させて、心の声が聞こえなくなったり。

朝起きたら、おはよう。人を傷つけたら、ごめんなさい。大好きな人に会ったら、大好きですなんて、シンプルに生きていきたいのに。ずっとちゃんと思ってるよ。

椰子の木を追いかけて船を漕いでいた

1ヶ月のデトックスプログラムを経てみて、当初の期待は裏切られました。心身ともにデトックスされたら、やりたかったことが浮かんでくるだろうと考えていたのです。

デトックスプログラムは効果はある。けれど人生を変えてくれる魔法じゃない。

同時に不安とも戦っていました。お金がなくなっていく不安。未来への漠然とした不安、焦り、焦燥感。

深夜のフライト、大きな移動、刺激の強すぎる食事(自炊のできない場所や、周囲にスーパーがないときは外食だったので)。せっかく病院で整えてもらった身体を壊し、数日発熱で寝込んだのも精神的にこたえました。

ぼんやりと、思考もままならない状態で浮かんできた景色。それは風にたなびくとケラケラとおしゃべりをしているような、椰子の木たち。

椰子の木の下にみたいと焦がれて諦めた場所があったのです。蘇る過去の記憶たちと新しい期待。

そうだ、今から視察に行こう!と思ったものの、来月の帰国の予定を組んで購入してしまった返金が効かない航空券たち。

せっかくやってみたいことが見つかったのに!過去の自分の行動が今の自分の行動を制限してしまうなんて、愚かだと自責が生まれます。

ただ、気づいときには、日本に帰りたいと感じている自分を発見していました。10万円を航空会社にドネーションしたんだと気持ちを切り替え、日本に帰りました。

つづく。

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