『たまごの祈り』㉓
私たちは幾つもの帰り道を一緒に歩き、ショッピングモールの安っぽいフードコートでデートを重ね、隣のテーブルを陣取る他の中学生とかわらないような他愛もない話をして、控えめに囀る小鳥のように美しく清い交際を続けた。彼女は図書館で私が読んでいた本を積極的に借りて読み、休み時間に私の肩に寄りかかり、寒い夜の公園で、さむいね、と言って、震える手を遠慮がちに差し出したりした。愛を探るような熱っぽい呼吸を繰り返す彼女のそれは、女の子らしい、細く頼りない指だった。柔らかに絡まる私たちの指はまるっきり子供で、でも彼女の横顔は、はっとするほど大人びていて美しかった。
私は彼女が人としてとても好きだった。彼女は屈託のない笑顔で人を退屈させないほどによく喋るし、油絵の具で描いた風景画は中学生とは思えないほど緻密で美しかったし、この絵はあおちゃんのために描いたの、なんて、美しい台詞を違和感なく口にすることができた。それは紛れもない才能だった。綺麗なものを描き出す才能と、愛するものをまっすぐ愛していると言える、才能。
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