過去に戻って収めたい(前編)

 タイムマシンがあったら、人類は今まで何度そう思ってきたのだろうか。僕もその何万回かを担っている。とりわけ過去に戻りたい。僕にはずっと、一度観てみたい光景があるのだ。

 1967年4月9日、地球で1人のヒーローか帰っていった。

 スラリとした銀色のボディー、所々に走る赤いライン、胸に光るタイマー。日本が誇るヒーロー「ウルトラマン」の最終回が放送された日だ。

 宇宙から円盤の群れがやってきて、全世界に攻撃を仕掛けると予告する。円盤から現れたのは宇宙恐竜ゼットン。アルファベットの「Z」と五十音の「ン」を組み合わせた名前で、まさに最後の敵に相応しい怪獣だ。科学特捜隊隊員ハヤタ・シンはウルトラマンに変身して戦うも、攻撃が全く通じない。キャッチリングも、八つ裂き光輪も、これまで幾多の怪獣を倒してきた必殺技がどれも通用しない。そして頼みの綱・スペシウム光線すらも吸収され、跳ね返された光線を受けウルトラマンはついに倒れてしまった。しかし科学特捜隊が新兵器・ペンシル爆弾を使ってゼットンを倒すことに成功する。

 力尽きたウルトラマンの頭上に赤い球が降りてくる。現れたのは宇宙警備隊のゾフィーだった。ウルトラマンはハヤタと分離し、ゾフィーの持ってきたもう1つの命を受け取って蘇る。こうしてウルトラマンは、地球に帰っていくのだった。

 その日、テレビを観た子供たちは、窓を開けて夜空に叫んだそうだ。「ウルトラマーン!ありがとう!さようなら!」夜空に輝く星が、まるでウルトラマンの故郷M78星雲光の国かのように見えたのだろう。命をかけて最後まで地球を守ってくれた、夢と勇気を与えてくれたウルトラマンに対しての、子供たちの精一杯の感謝だったのだ。

 つづく。


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