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TVドラマ雑記『ダッシュ&リリー』

 恋愛ドラマは、古今東西老若男女問わず膨大な数が存在している。人間が2人以上いればあらゆる形の恋愛を描くことができるが、そこに面白さを感じさせてくれる要因は、出会いと成就(もしくは決別)をつなぐ過程にある。
今作は、出尽くした感のあるクリスマスラブストーリーの1つだ。しかし、手堅さと新鮮さを同時に組み込むことに成功し、可愛らしくもどかしい過程を演出している。
 誰とでもダイレクトに繋がれるSNS時代に、非デジタルな関わり方の不便さが生む、好奇心とすれ違い。それが青春時代の孤立感と合わさって、出会いに対する期待を高めていく。相手に対する感情を整理し、孤立を解消することによってあらゆることが実を結ぶのも、非常に現代的な展開と言えるだろう。
 また魅力なのが、主人公たち(彼と彼女)を含む人々の多様さだ。彼の元恋人はインド系。彼女は日系アメリカ人で、その兄はゲイ、その恋人はプエルトリコ系……と、NYの今の人間関係を垣間見せてくれる。人種や立場の違いが、乗り越えるべき壁としてあったこれまでのラブストーリーに、『今』を叩きつけるようで、また爽快だ。
 たしかに、現実を美化している気もする。それでも、まともなクリスマスではなかった去年のことを忘れず、こんなクリスマスがいつか来ることを信じ続けるためにも、今作を全力でオススメしたい。

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