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TVドラマ雑記『チェルノブイリ』

 放射線の何が恐ろしいのか。目に見えない強力な電磁波は、環境だけでなく、関わった人の人生を破壊していく。相手とのキスが、ハグが、握手が……、愛や親しみを示す全ての行動が、放射線被曝によって命を奪う凶行に変わってしまうのだ。
 今作は、事故を乗り越えた感動を描くのではなく、初めから終わりまで、放射線とそれをばらまいた人間の恐ろしさを見せ続ける。そこでは、罪人が保身のために嘘と根拠のない主張を垂れ流し、最前線に立つ人々が犠牲になっていく。
 日本で今作を見る人は、隅々まで描かれる現場の惨状と政治の迷走に、痛いほどの既視感を覚えるはず。原発に限ったことではなく、ある出来事を隠ぺいする手順や、当事者の葛藤、事故を起こした役人たちへの制裁の軽さなど、ついこの前起こった出来事を見ている感覚が強い。
 最近、本国での原発事故を「終わったこと」として映画にした日本は、自分の周りにも火が回っていることに気付いているのだろうか。
まだ終わっていない、まだ変わっていない。そう伝えてくる、TVドラマという名の報道。
(『チェルノブイリ』はAmazonプライムビデオスターチャンネルEXにて配信中。HBOはスゴイ。いずれ『トゥルー・ディテクティブ』とか『ウォッチメン』の話も……)

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