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【超具体的解説】 ディレクターや編集者の指示が意味不明なのはなぜか? どうすればいいのか?

「もっとこう、親しみやすいっていうか、そういう感じで」
「なんか、ボンヤリした書き方ですね。もう少し刺さるように書いてもらえませんか」

ディレクターや編集者からのこういった「フワッとした指示」はライターあるあるの一つだ。指示を受けたライターの大脳新皮質では「?」が乱舞するのだが、出した方はなんとなく満足げだったりするので始末が悪い。

「どないせぇ、っちゅうねん?」と、心の内で呟きながら、とりあえずパソコンに向かうライター。今回はそんな悩めるライターさんたちに役立つアドバイスを書いてみたい。

◆原因①:言語化できず「伝え方がわからない」

理解不能な指示を受けた際、多くのライターはディレクターや編集者の意図をなんとか汲み取ろうとする。基本的には生真面目な人が多いので、「理解できないのは自分の能力が低いせい」と思い込む人も少なくない。

だが、実際にはたいていの場合、問題は指示を出す側にある。伝えるべき情報を伝わるよう話すのはディレクターや編集者にとって、もっとも重要な業務の一つだが、的確にこなす能力や意志を持っている人が少ないのだ。

自身がライターを使ってみると、ディレクターや編集者の苦労がよくわかる。十分な能力を持つライターを採用したとしても、意図した通りの文章を書いてもらうのはたいへんだ。

用語の難易度やテイストを伝え、具体的な例をいくつか示すのは基本中の基本。それぞれの技倆や性格、理解力を意識しつつ、伝え方を工夫し調節しなければならない。

相当高い言語か能力が必要だし、無茶苦茶手間がかかる。できる、あるいはやろうとするディレクターや編集者が少ないのは仕方がないところではある。

「ライターを少しやったらディレクター」という粗いステップを踏んで、指示する側に転じた人が最近では多いので、「フワッとした指示」が急増している、とも考えられる。

◆原因②:まさかの事態! 「欲しいものがわからない」

指示がフワッとしてしまう原因にはもう一つ、「そもそもなにが欲しいか理解せず発注している」という事実がある。どんな書きぶり、どんな内容のテキストが必要なのか、ディレクターや編集者がしっかり把握していないケースが少なくないのだ。

本来、彼らは案件についてもっとも詳しく深く理解しているはずの人たちだ。ところが実際には「こんな感じ」というあいまいなイメージしか持っていないケースが少なくない。その原因は基本的には企画の甘さにある。

ターゲティングが甘く、コンテンツのゴールや読者のゴールを矛盾なくしっかり設定できていないのだ。「誰に」「なんのために」「なにを」「どんな風に」届けるのか――企画を立てる際にはこういった要素を矛盾なく明確に設定しなければならない。

企画の段階でこれらの要素があいまいだったり、矛盾をはらんでいたりすると、どんな文章を発注すればいいのか理解しないまま、ライターに仕事を発注することになる。

企画がはらむあいまいさや矛盾は、文章として具現化する際、問題となって表出する。「そもそも企画がおかしい」とライターが気づいてディレクターや編集者と共有できればよいのだが、そうでなければライティング技術に問題がある、という認識のもと、案件は泥沼化する。

◆対策①:ディレクター・編集者と企画の7W2Hを共有する

ライティングの経験が浅い人の多くは「指示の通りに書けばいいはず」と考える。矛盾がなく具体性の高い指示をもらえるならその通りだが、実際にはそんな案件はとても少ない。

経験上、「下りてくる指示の大半は矛盾をはらんでいる」とぼくは認識している。文章化しないと見えない矛盾も多いので、ある程度の矛盾が潜んでいるのは仕方がないことなのだ。

有効な対策の一つに企画の共有がある。特に「7W2H」を意識しつつ、ディレクター・編集者と情報共有すると矛盾をつぶしやすい。

いわゆる「5W1H」に「Which(どちら)」「Whom(誰に)」「How much(どのくらいのコストで)」を加えたものが「7W2H」である。

矛盾する2つの要件があるなら、どちらを優先するのか。
誰に情報を届けたいのか。
コストはどの程度かけるつもりか。

こういったキーポイントをディレクター・編集者と一緒に考えて確認しておくと、その後で下りてくる指示は明確なものになりやすい。

◆対策②:具体例を挙げてもらいサンプル原稿を書いてみる

これはやっている人も多いと思うが、ディレクター・編集者に「イメージに近い既存のサイトや書籍を挙げてもらう」という方法がある。
「このサイトみたいなテイストで書いてみて」
「この本みたいな書きぶりがいい」

そういう具体例をもらえると、イメージを共有しやすい。ただし、その場合も指示の内容まで深掘りしてから共有することが大切だ。

ディレクターがいいと感じているのはどこなのか。「用語の硬さがちょうどいい?」「シズル感の程度がいい?」「読者への呼びかけがこのディレクターは好き?」――話を聞いてみないと、どの部分に着目して合わせていけばいいのかわからない。

ある程度、そういった情報を共有できた、と思えたらサンプル原稿を書いてみるとよいだろう。テストを求められていない案件でも、500文字程度でいいので、テキストを読んでもらってから本番にかかる方が、結局は労力を省けることが多い。

◆まとめ

経験値の高いライターは「フワッとした指示」にもある程度しっかり対応する。言語化されていない要望を汲み取ったり、質問を重ねたりすることで、理解不能な指示を理解可能なものに変換できるためだ。時には、企画の修正等も一緒に行う。

経験がまだ少ない段階では、そういった案件ごとの対応が難しいので、企画の共有などの作業をルーティンとして行うといいだろう。特に、「7W2H」の確認はかなり有効なので、試してみてほしい。

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