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【ゲームシナリオ志望者必須】ゲーム制作に必要なテキストとシナリオのお話し   1章「ゲーム中のテキスト」

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1章「ゲーム中のテキスト」

1-1「ゲーム中テキストの存在理由」

「ゲームテキストってアレだろ、フレーバーテキストとかだろ?
 そんなのはいいから、シナリオの書き方じゃないのかよ」
とおっしゃる方もいらっしゃると思うが、
ゲームシナリオもゲーム中テキストの一部である。

またゲーム中のテキストを知る事は、ゲーム上での表現を
最大限生かすゲームシナリオの作成に繋がる為、
ゲーム中テキストへの理解は十分にしておかなければ、
ゲームとゲームシナリオが乖離してしまい、
独りよがり、上滑りという評価を受ける可能性が増えてしまう。

それを避け、ゲーム全体のクオリティを上げる為にも、
ゲーム中テキストについて考えてみよう。


さて。
それではまず、小見出しにもあるように
「ゲーム中テキストの存在理由」は何か、一度考えてみよう。

一言で言えば、前項で言葉の意味として挙げた
“人(プレイヤー)に伝える”
為に、ゲーム中テキストは存在している。
ゲームの操作法や進行方法のレクチャーの為のテキストがこれに当たる。

さらにもう一つの側面として、
“ゲーム中の表現方法の一つ”
としても、ゲーム中テキストは存在している。
これはわかりやすく言えば、ストーリー部分や世界観、
フレーバーがそれに当たる。

では、そこにもう一つ質問をしたい。
存在理由を確認する為には、避けて通れない設問だ。

“果たしてゲーム中テキストは、ゲームに必要なのか?”

プレイ済みの人はすぐに
「ICO」「ワンダと巨像」が思い起こされただろう。
ゲーム中のユーザーインターフェース(※以下UIと表記)要素を
最大限排除して、世界観への没入を図った作品だ。
その他にも、ゲーム中のテキストを極力排除したゲームはあるし、
ゲーム中ストーリーがありながら、テキストで表現しない作品と言えば、
初代マリオブラザーズやドンキーコングまでさかのぼる事ができるだろう。

ただし、それでも私は、ゲームにテキストは必要だと考えている。
ゲームへの没入感を出す方法はテキストの排除だけではない。
例えばSEKIROの死亡時演出に「死」と画面中央に大きく出る演出は、
和風テイストと、死にゲーの一撃死を的確に表現している演出だ。
あれはタイポグラフィだと言うのであれば「死亡」でも「失敗」でもいい。
だが「死」にしたのは、一文字だけで有無を言わせぬ事実を突きつける
力強さと、それ以上でもそれ以下でもない無情さと儚さを表現する為に
テキストを理解した上で、試行錯誤した結果だと考えている。
(考え過ぎかもしれないが……)

そして何より、ゲームには「タイトル」が必要である。
タイトルは「ゲーム中テキスト」なのだ。
スピリチュアルな話にも聞こえるだろうが、ゲームに限らず、
森羅万象に対して人が何かを認識し、触れるには「名前」が必要である。
そしてその「名前」は「テキスト」で表現され「認識」されるのだ。

ここまで深掘りすれば、
ゲーム中でのテキストの役割をそれなりには理解頂けたと思う。
様々な理由で、各所のゲームテキストは存在しているが、
その存在理由としては
「伝える為」
「表現する為」

そして「認識される為」
なのだ。

これらの認識をおぼろげにしていると、
ゲーム中テキストを作る際に漫然と作ってしまい、
ユーザーに届かない物になってしまう可能性がある為、
ゲーム中テキストに関しては「存在理由」を意識して作成しよう。

1-2「ゲーム中テキストの種類」

本項ではまず、ゲーム中テキストの種類を簡単に列挙する。
なおゲームのジャンルなどによって必要テキストは変化する為、
マニュアルもゲーム内テキストと含めて、代表的な物を挙げておく。

■ストーリーに準拠するテキスト
 ・ゲームストーリーテキスト(シナリオと呼ばれる部分)
 ・地名/設定系の名称
 ・キャラクター名称
 ・タイトル名称

■UIに付随するテキスト
 ・コンフィグなど、システムに関与するテキスト
 ・ゲーム操作系UIに関与するテキスト
 ・チュートリアルテキスト

■フレーバーテキスト
 ・アイテム系の名称/説明文
 ・攻撃方法(技/魔法)などの名称/説明文
 ・バックストーリー系のテキスト

それぞれのテキスト区分を見れば、
どのような物になるかは想像に難くないと思うので、
各テキストの説明は省略させて頂く。

ざっくり挙げただけでも、これだけのテキストがゲーム中に使われている。
普段ゲームをプレイしている際には意識しない為、
時折意識してどこにどのようなテキストが使われているか、
確認してみるのも楽しいだろう。

1-3「ゲーム中テキストの体系化」

シナリオの部分は演出が絡む為、別の機会に説明させてもらう事にして、
ここからはUIに付随するテキスト、
およびフレーバーテキストの執筆方法に関して記載しよう。

まずなによりも大切で、一番最初にしなければならないのは、
「ゲーム中テキストの体系化」である。

例えば、ゲーム中テキストが下記の5種類のみあるゲームがあるとする。

・コンフィグの各種説明テキスト
・武器のフレーバーテキスト
・技の説明文
・NPCキャラの台詞
・チュートリアルテキスト

この場合、以下の様に体系化する事が可能である。
(あくまでこれは例の一つです。他の体系化が出来る場合も多くあります)

・プレイヤー向けテキスト
 ・コンフィグの各種説明テキスト
 ・チュートリアルテキスト

・プレイヤーキャラ向けテキスト
 ・技の説明文
 ・NPCキャラの台詞

・世界観テキスト
 ・武器のフレーバーテキスト

「プレイヤー向けテキスト」は、
プレイしているプレイヤーに向けてのテキストである。
ゲームのシステムやプレイ方法を、
ゲームの世界観を飛び越えて画面の前のプレイヤーに
直接語りかけるテキストとなる。

「プレイヤーキャラ向けテキスト」は、
ゲームの中で動かしている
プレイヤーキャラに向けられているテキストである。
NPCとの会話や、プレイヤーキャラが扱う物に対して
言及されているテキストが主になる。

「世界観テキスト」は、
プレイヤーに向けてのテキストに類似するが、
何かを指示したり指南したりする訳では無く、
ゲームの世界観を補強したり、
世界観に準じた雰囲気を表現するテキストである。

ここでの体系化の方針がわかって頂けただろうか?
様々な体系化の方法があるが、
今回は主に「誰に向けてのテキストか」で区分けしてみた。
では、何故このテーマで体系化をしたか。
0章をお読み頂いた方であれば、既に気付かれているだろう。
思いつかない、0章を読んでいないと言う方は、
是非とも0章を読んでいただければと思う。

答えは「わかりやすく伝える」為である。

そう、つまりわかりやすく伝える為に、体系化をして区分分けした上で、
それぞれの区分の文体を決めてしまう、と言う手法に繋がるのだ。

伝える相手を区分する事により、同一区分に割り振られた各コンテンツは、
同じ文体を使える可能性が高くなる。
実際、同じ文体でも構わない事の方が多いだろう。
このようにして、ゲーム内テキストの文体を絞り込むことにより、
同一区分内でのテキスト表記の揺らぎなど、
誤字の範疇やプレイヤーの違和感になり得る可能性がある文章を
事前に防ぐ為、また後々に追加したシステムやの文体方針を
定める為の体系化、だと考えていただければと思う。

これらが出来ていないゲームは
作品内でちぐはぐな表現が頻出する事になり、
プレイヤーの没入感だけではなく、プレイアブルをも阻害してしまう。
それはもはやバグのレベルであると私は考えている。

逆にこれが出来ているゲームは、ゲームへの没入感を邪魔せずに、
ユーザーのプレイアブルも正確に伝える事ができて、
テキストを意識せず読める、と言う段階まで落とし込むことへの
第一歩を踏み出せているだろう。

1-4「ゲーム中の各要素にふさわしいテキストとは」

前項で体系化し、ゲーム内の各要素に付帯される
テキストの区分分けはできた。
次はそれぞれの要素に対して、どんな文体を当てはめれば良いか考えよう。

○プレイヤー向けテキスト
 画面の向こうのプレイヤーに向けてのテキストなので、
 ・文頭下げ無し
 ・ですます調
 ・丁寧さを出す為に、文末に「。」をつける

○プレイヤーキャラ向けテキスト
 プレイヤーキャラに向けてのテキストなので、
 ・文末の「。」は無し
 ・文頭下げ無し
  ※さらに要素によって分散化
   ・NPCは各キャラの口調など、臨機応変に
   ・技などの操作や効能が絡む物は、言い切りで。機械的な説明文

○世界観テキスト
 世界観を表現するテキストなので、
 ・文末の「。」は無し
 ・文頭下げ無し
 ・極力体言止め

例えとして、こんな感じである程度の文体の方針を決めておけば、
後々の追加や同系統要素追加の際に既存の方針に従って、
新たな方針を決めることも容易になる。
また、もっと細部を決めておきたい場合は、先の例の一部の様に、
さらに要素に応じて細分化し、それぞれで決めておけば良い。

ここで重要なのは、あくまで方針を決めて運用し易くする事が目的であり、
要素に特殊な仕様などがある場合は、
その要素独自のルールを当てはめる柔軟さが必要だ。
その為にも元となるルールを決めてどこかに
共有ドキュメントとして保存して、チーム全体で把握しておく事が、
後々の事故はある程度防ぐことに繋がる事を理解して頂ければと思う。

1-ex.1「テキストと仕様の切っても切れない関係」

前項までは考え方を理解してもらう為に、
システム仕様側の都合はひとまず置いておいて、
テキストを主としての話を進めてきた。

だが実際は、ゲーム開発でテキストを主とする事の方が珍しく、
システムやUIからの要件に応じて、テキストを作成する事が主となる。

その為、前項までの考え方を踏まえた上での、
仕様の読み解きとその仕様に寄り添ったテキストの作成が求められる。
こちらの方が、クオリティに直結する為、補足項目として記載する。

例えば、前項の体系化を整えた後、
チュートリアルテキストの作成を依頼されたとしよう。
その際制作担当からチュートリアルの仕様を以下の様にヒヤリングできた。

チュートリアルはプレイヤーキャラの上官からの訓示
UIは通常のメッセージウインドウではなく、チュートリアル専用ウインドウ
チュートリアル専用ウインドウには、上官の顔グラフィックが出る
上官はハートマン軍曹の様な厳つい中年男性

この仕様を元に、前出で決めたチュートリアルを含む、
プレイヤー向けテキストの文体を当てはめてみよう

・プレイヤー向けテキスト
 画面の向こうのプレイヤーに向けてのテキストなので、
 ○文頭下げ無し
 ○ですます調
 ○丁寧さを出す為に、文末に「。」をつける

仕様と合わせ見て、これは正解だろうか?
厳つい中年男性の上官がプレイヤーに向けて丁寧な話し方では
さすがに締まらないし、世界観からもずれてしまう可能性が高いだろう。

なので、テキスト側から決定した体系よりも、
仕様を優先してテキストの文体を再構築する。

・チュートリアルテキストの文体
 ○画面の向こうのプレイヤーではなく、プレイヤーキャラに語りかける
 ○上官キャラに合わせて厳しい命令口調。
 ○句読点ルールは、シナリオの台詞テキストに準拠

そしてここで更に、テキスト側から提案ができるアイディアが
発生している事に気付いただろうか。例えば

・チュートリアルが、プレイヤーにプレイをさせて進むシーンがあった場合
ex)射撃訓練のシーン
  射撃訓練でプレイヤーが成功or失敗した際に、
  上官からのコメントが欲しい。
  特に失敗した際に檄を飛ばされると臨場感が増す。

このような相談をチュートリアル担当者に持ちかける事が出来れば、
さらにゲームの臨場感を増やす事が可能になるのである。
(可能か不可能かは別の問題。相談するだけならほぼ無料と思いながら)

上記の様な形で、ゲームテキストはゲームの仕様と
密接な関係である事が多い為、仕様の読み込みや、
実装物の理解と把握がテキストのクオリティに大きく関与するのである。

仕様に準拠するのは当然だが、テキスト作成依頼を受けた際に、
仕様やシチュエーションを踏まえて、
テキスト作成側からもアイディアを提案できれば、
さらにゲームのクオリティがあがる事に繋がる。
そのチャンスを逃さないようにテキスト担当だとしても、
ゲームの仕様には常に敏感に確認が出来る様にしておく事が大切だ。

1-ex.2「呼称の統一化を意識して行う」

今まで語った体系化とは少しはずれた話で、
聞いた人は「そんなの当たり前だろう」と思いながらも、
見落としがちでかつフォローに膨大な手間がかかるテキストの注意点が、
「呼称の統一化」である。

端的に、ゲーム内でとある事象や名称をなんと呼ぶかを決めておくと言う、
単純明快な物なのだが、テキストへの留意が薄いと
ここはほぼ必ず漏れてしまう為、補足項で取り上げさせていただく。

例えば

・ウインドウ or ウィンドウ
・ウェポン or ウエポン or 武器 or 獲物
・決定 or 許可 or OK
・クリア orクリアー or 成功 or 完了

どれもゲーム的には非常に使用頻度の高い呼称だと思う。
だが、それらには例えば上記の様な表記揺れが存在している。

ルールを制定せずに、各担当が各々にテキストを記載したとしよう。
するとほぼ必ず、この表記揺れが発生する。
カタカナの大文字小文字程度の揺れなら、美しくない、丁寧では無い、
と言う印象だけで終わるかもしれない。
だが、システムに関わる部分や、
ゲームの動作に関わる部分で表記揺れを起こしてしまうと、
ユーザーが異口同義の呼称に対して、
どう解釈すればいいか混乱する事は明白だろう。
こうなると、単にテキストの表記揺れの範囲には収まらず、
ユーザーのプレイを阻害する物として認識されてしまうのだ。

だがゲーム中テキストの表記揺れが存在する全てのテキストを、
開発初期から定めておく事は不可能だろう。
基本的な表記揺れ呼称を最初に制定し、
残りは開発しながら、各所で決定していく運用が主になると思われる。
なのでテキスト担当する人、また各部門でテキストを実装する人は、
「この呼称には、他の呼称はあるだろうか?」
「既に実装された部分で、同等の物をどう呼称しているだろうか?」
と意識する癖をつけて貰えると、表記揺れは格段に減少する。
ひいてはそれが、先々の表記揺れ洗い出しという、実に生産性の無い、
しかしやらねばならない悲しい作業に繋がるので、
是非とも心に留めておいて貰いたい。


かいつまんで説明してきたが、
ゲーム中テキストと一言に言っても、
様々な種類と、様々な考え方があると理解して貰えたと思う。

さらに、ゲームテキストである以上、
仕様と密接な関係である事も理解して貰えれば幸いである。

基本的にゲーム中テキストは、仕様に準拠する以外は
『こうでなければならない、と言うルールは存在しない』
ので、柔軟に、ゲーム画面やゲームプレイを常に想像しながら、
どんなテキストがふさわしいか考えて欲しい。

次回はいよいよお待ちかねの、
ゲームシナリオの書き方についてを記載していこう。
こちらは膨大なのでいくつかの項目に分けて、いくつかに分けて、
特にゲームならではの作法に関してご紹介して行こうと思う。

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