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橋梁銘板・塗装記録表コレクション(8)「常磐自動車道 利根川橋」

(8)こんなところに記録表「常磐自動車道 利根川橋」

今回は千葉県柏市と茨城県守谷市「常磐自動車道 利根川橋」の銘板と塗装記録表をご紹介します。

常磐自動車道 利根川橋

「利根川橋」と名の付く橋は、今回ご紹介する常磐自動車道だけでなく、関越自動車道(群馬県渋川市中村~群馬県北橘町分郷八崎)、北関東自動車道(群馬県高崎市宿横手町~群馬県前橋市横手町)、東北自動車道(群馬県邑楽郡明和町千津井~埼玉県羽生市下村君)、東関東自動車道(千葉県香取市大倉)、国道4号(埼玉県久喜市栗橋北~茨城県古河市中田)にも有ります。

待ち合わせには不向き?
千葉県香取市の「利根川橋」だらけ地帯

「利根川に架かってる橋なんやし、全部利根川橋でええやん!」…ということになったのどうかは定かではありませんが。

かつて東京都知事選で、現都知事と同じ名前の候補者を擁立して、かく乱を狙おうとした政党がありましたが。橋の名前もあまりに同じ名前が多いため、情報が混同される可能性もありますので、ここでは「常磐自動車道 利根川橋」とさせていただきます。

田んぼを貫く常磐自動車道

「常磐自動車道 利根川橋」は、常磐自動車道の柏ICと守谷SAの間に架かっています。

Googleマップ
「常磐自動車道 利根川橋」

守谷SAは、一般道からも入れるサービスエリアで、茨城のグルメが堪能できたり、お土産が買えたり、ドッグランで犬を走らせてみたりと、近隣に住む人が楽しめる施設になっています。

何故、わざわざ近所の人がサービスエリアへ?と思われるかも知れませんが、前回の「大利根橋」の記事でもご紹介させていただきましたように、利根川周辺は見渡す限り田んぼで、(おそらく)あまり遊ぶところがないためだと思われます。

一方、サイクリングロードでひたすら自転車を漕ぐとか、ぬかるんだ川のほとりでモトクロスバイクをブイブイやるとか、パラセーリングで遠くまで吹き飛ばされるとか…そういったアクティブなレジャーについては、存分に楽しめる場所になっています。

冬になるとたこあげ(連ダコ)も楽しめます

1.3社3様の塗装記録表

残念ながら今回は「常磐自動車道 利根川橋」の銘板は見つかりませんでしたので、塗装記録表のみを紹介します。

実は今回、塗装記録表もなかなか見つかりませんでした。「もう見つからないかも…」と諦めかけた時に、鉄筋のようなもの(補強用のアンカーボルト)がポツポツと飛び出した橋脚がありまして、その形状が面白かったのでいろんな角度から撮影していた時に、偶然発見しました。

こんなところに記録表!!

 手すりが被ってうまく撮れていませんが、塗装記録表は4つありました。

塗装会社ごとに塗装記録表の内容が異なります

2.塗料は関西ペイント・大日本塗料、塗装会社は磯部・平岩・宇野重工

1)磯部塗装の塗装記録表

一般名ではなく商品名で書かれてあります。

磯部塗装の塗装記録表

塗装完了 昭和53年12月
素地調整(外面・内面)ショットブラスト
プライマー(外面・内面)ウォッシュプライマー
下塗Ⅰ(外面)シアナミドサビナイト№50(さび色)・(内面)SDCコート#402黒色
下塗Ⅱ(外面)シアナミドサビナイト№51(赤さび色)・(内面)SDCコート#403さび色
中塗(外面)SDマリンペイント中塗・(内面)SDCコート#404黒色
上塗(外面)SDマリンペイント上塗
製造会社(外面)関西ペイント株式会社(内面)大日本塗料株式会社
施工会社 磯部塗装株式会社

 「シアナミドサビナイト№50」の一般名は、シアナミド鉛錆止めペイント1種、「SDマリンペイント中塗(上塗)」は、長油性フタル酸樹脂(中塗)上塗塗料、「SDCコート#402」は、タールエポキシ樹脂塗料です。昭和53年ですので、今の塗料規格とは異なります。今は各社ともに環境対応型の塗料を発売しています。


2) 平岩塗装 の塗装記録表

  初めて塗り替えをした時の記録表のようです。割と軽めの下地調整を行っています。

平岩塗装 の塗装記録表

塗装完了 昭和64年1月9日 第1回塗装
A1~P6 全面塗替塗装
素地調整 第3種ケレン及び第4種ケレン
下塗塗料 ズボイド下塗(赤さび色)JIS-K-5623 1種
中塗塗料 ズボイドSR中塗(M10-335淡)JIS-K-5616 2種
上塗塗料 ズボイドS上塗(M10-335)JIS-K-5616 2種 日本道路公団規格
製造会社 大日本塗料
施工会社 平岩塗装株式会社

このうち、 JIS-K-5623 は今は使われていない規格です。(2014年廃止)


3) 宇野重工 の塗装記録表(1)

  前回の塗装から30年近くが経過した、平成27年3月に塗り替えを行った時の記録表のようです。今回発見した記録表の中では最新です。NEXCO塗料規格が使われています。相当痛みが進んでいたのでしょうか、第1種ケレンに加えて、下塗り3回+増し塗り…と、私の化粧並みに(?)厚く塗られています。

宇野重工 の塗装記録表(1)

橋梁名 利根川橋
施工部位 A1,P3,A2 上下線 桁端部
塗替え塗装系 一般外面 C-3
塗替え完了年月 平成27年3月(第2回塗替)
塗替え前の塗装系 a-1
素地調整程度 一般外面 第1種
下塗第1層 ゼッタールEP-2HB(NEXCO-P-06) 標準膜厚75μm
下塗第2層 エポスマイル ライトグレー(NEXCO-P-08) 標準膜厚60μm
下塗第3層 エポスマイル グレー(NEXCO-P-08) 標準膜厚60μm
増し塗り エポスマイル ライトグレー(NEXCO-P-08) 標準膜厚60μm
中塗 Vフロン#100Hスマイル中塗 G-22-85H淡(NEXCO-P-21) 標準膜厚30μm
上塗 Vフロン#100Hスマイル上塗 G-22-85H(NEXCO-P-21) 標準膜厚25μm
製造会社 大日本塗料
施工会社 宇野重工株式会社

C-3は、厳しい腐食環境や塗替えが容易ではない橋梁に使われる塗装系です。上にも書きましたが、塗替え前の塗装系「a-1」は、今は環境への配慮のため使われていません。

「ゼッタールEP-2HB」の一般名は、厚膜形有機ジンクリッチペイント、「エポ(オール)スマイル」は、変性エポキシ樹脂塗料下塗、「Vフロン#100Hスマイル中塗(上塗)」は、ふっ素樹脂塗料中塗(上塗)です。


4)宇野重工 の塗装記録表(2)

支承(ベアリング)の塗装記録表もありました。(具体的な施工場所は分かりませんが…)

宇野重工 の塗装記録表(2)

橋梁名 利根川橋
施工部位 A1,P3,A2 上下線 桁端部支承
塗替え塗装系 特殊部 g-3
塗替え完了年月 平成27年3月(第2回塗替)
塗替え前の塗装系 f-1
素地調整程度 特殊部 第1種
下塗第1層 ゼッタールEP-2HB(NEXCO-P-06) 標準膜厚75μm
下塗第2層 エポオール#40下塗 赤さび色(NEXCO-P-08) 標準膜厚60μm
下塗第3層(1回目)エポニックスH N-7(NEXCO-P-13) 標準膜厚150μm
下塗第3層(2回目)エポニックスH N-8.5(NEXCO-P-13) 標準膜厚150μm
中塗 Vフロン#100Hスマイル中塗 G-22-85H淡(NEXCO-P-21) 標準膜厚30μm
上塗 Vフロン#100Hスマイル上塗 G-22-85H(NEXCO-P-21) 標準膜厚25μm
製造会社 大日本塗料
施工会社 宇野重工株式会社

「エポニックスH」の一般名は、厚膜形エポキシ樹脂塗料です。150μm×2回塗で、膜厚300μmとなっています。

利根川橋の下に置かれた用途不明の農機具

NEXCOでは「高速道路リニューアルプロジェクト」により、全国の老朽化した高速道路の大規模更新・修繕にあたっていますが、まさに果ての無い、大切な仕事だと感じさせられます。


最後に、2020年3月に発行された、(一社)日本塗料工業会・技術委員重防食部会による「重防食塗料ガイドブック」(第5版)をご紹介します。(※掲載当時は発売されたばかりでした)

「重防食塗料ガイドブック」(第5版)

重防食に関するガイドブックとしては、(一社)日本道路協会の「鋼道路橋防食便覧」が知られていますが、最新版が平成26年3月ですので、鉛・クロムフリー化製品についての記述が不足しています。その不足分を補うのに同書は役立ちます。

特に第4章以降(第4章 橋梁塗装のライフサイクルコスト/第5章 技術データ/第6章 塗料の問題点/第7章 塗料の安全・衛生)は、橋梁塗装の今を知る上で参考になるかと思います。

内容としては、便覧は防食塗装の技術的な解説が中心ですが、「重防食塗料ガイドブック」は、各塗料の化学的な特徴(硬化・防食の仕組み)にページを割いています。

おまけ写真1
おまけ写真2

次回は、大阪「天神橋」

江戸川に架かる「葛飾大橋」の銘板と塗装記録表をご紹介します。

葛飾大橋

©2022 Tominaga Mikuni


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