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【タロット小説】 3番「愛しき日々」

家事がひと段落し、ミカは新築のリビングでお茶をすすっていた。
彼女は少し膨らんだ腹部をさすりながら、もうすぐ生まれてくるであろう我が子に向かって語りかけた。
「今日はいい天気だねぇ。」
窓の外からは、温かい日差しが降り注いでいる。
腹の中からは特に返事はない。
しかし彼女は、毎日、まだ顔も知らない我が子に向かって語りかけていた。
そんな時間が、彼女にとっては幸せなひとときだった。  

「あ、そうだ。久しぶりにあそこに行ってみよう。」  

体調もいいし、天気もいい。
今日は絶好のお出かけ日和だ。  

彼女は散歩がてら、少し離れた場所にある公園にやって来た。
ここは芝生が広がり、様々な木が植えてある地域の憩いの場だ。
奥の方には美術館もあり、隣に神社もあるという立地であるこの公園は、リフレッシュにはもってこいの場所だ。
休日は人が多いが、今日は平日だからか人はまばらだ。
ミカは夫であるヨシヒロと結婚前から、よくここに来ていた。
ピクニック気分で弁当を持って来たり、またある時は美術館に行ってみたり、神社を参拝したり。
この場所にはたくさんの思い出が詰まっている。
きっと子どもが生まれたら、また新しい思い出が増えていくことだろう。  

「今度は、パパも一緒に、ここに遊びに来ようね。」
ミカは優しく語りかけた。

-end-