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エッセイはじめました <さよならダイオウイカ>

 大学生になってから、通学用のリュックに、大きくてとてもリアルなダイオウイカのぬいぐるみストラップをつけていた。そのダイオウイカの周囲からの評判ははっきりと二つに分かれ、「いいよね」「個性的」という肯定的な意見と、「きもい」「正気じゃない」という否定的な意見だ。私が大学に入って一番親しくなった友人は、最初に会ったときに私がリュックにダイオウイカをつけているのを見て「こいつ絶対きもい。一番友達になりたくない奴だわー」と思ったそうだ。びっくりである。まあ、私も私でその友人の第一印象は最悪で、「うわ、嫌い。友達になれないタイプだわー」と思ったのだが。

 九月の終わりから、大学の新学期が始まった。そして、新学期がはじまると共に、私はダイオウイカから卒業した。つまり、リュックにダイオウイカをつけることをやめたのだ。


 もともと、ダイオウイカを通学用のリュックにつけていたのにはきちんとした(?)理由があってのことだった。ただ単に可愛いから、とか、目立つためにつけていたわけではない。私がリュックにダイオウイカをつけていたのは、「威嚇」のためである。


 私は自意識が過剰で、変なところで変に気を揉む傾向がある。大学生活が始まったとき、私はまだ化粧もしておらず、特別おしゃれだったわけでもない。それなのに、まわりはかわいい女の子でいっぱい。「あの子、かわいいよねー」「○○ちゃん、最初に見たときからかわいいって思っていて、ずっと友達になりたかったんだー」


 女子大特有なのか、それとも大学生というものはそういう生き物なのか、「かわいい」か否かでどんどん友達が決まっていく。恐ろしい。そんななか、芋っ子の私ができることなんて、無に等しかった。地が可愛くないので変におしゃれしても、「ブスがなにやってんだか」と思われそうで怖い。


そんななかでつけ始めたのが、ダイオウイカのストラップ。もはやストラップと言っていいのかわからないほどでかい。こいつをつけていれば、とりあえず「只者ではない感」が出ると思ったのだ。私は大学デビューをするのに、髪を染めるでもなく化粧を始めるでもなく、ダイオウイカのストラップを掲げて勇猛果敢に大学という戦場に繰り出したのだ。我ながら狂っている。


 そして半年経ったいま、無事に仲のよい友人もでき、自然な流れで化粧もはじめた。少しずつ大学という戦場での過ごし方にも慣れてきたので、めでたくダイオウイカからの卒業を決めたのだ。


 今までありがとう、ダイオウイカ。君のことは忘れないよ。そう言って私は、少し使用感の出たダイオウイカを引き出しにゆっくりとしまうのだった。

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