見出し画像

エッセイはじめました <電話>

 最近、家にひとりでいるときに電話がかかってくることが多い。大抵は大した用事ではなく、「不要品ありませんか」とか「畳の張り替えをしませんか」などだ。そういうときは「ありません」「うちは畳のお部屋がないので」と言うようにしている。


 しかし。しかし、だ。最近、私の電話事情が変わってきた。



プルルル……プルルル……
「はい、もしもし」
「こんにちは。わたくし畳の○○店でございます。」
「あっ はい」
「あら、いまおうちにお母さんはいる?」
「い……いません」
「そうなのね じゃあ、またお母さんがいるときにお電話するからね」


プルルル……プルルル……
「はい、もしもし」
「えー、不要品回収の○○といいますー」
「……はい」
「あっ いま、お母さんはいるかな?」
「いっ、いません」
「そうかあ じゃあ、お母さんがいるときにまた電話するからね じゃあねー」



プルルル……プルルル……
「はい、もしもし」
「お忙しいところ申し訳ございません。××カードと申します。○○さん(父)はご在宅でしょうか?」
「いま、いません」
「あっ……何時に帰ってくるかとか、わかるかな?」
「ちょっとわかりません」
「そうなんだ じゃあまた電話するね」



 おわかりいただけるだろうか……?完全に子ども扱いされているのである。こちとら十九歳の女子大生だというのに。「じゃあねー」ときた。えらいこっちゃ。


 自分が変なところで子どもっぽいのは百も承知なのだが、この電話問題に関しては原因が全くわからない。こっちが発した言葉は「はい もしもし」と「はい」だけなのだから。もはやそのたった二語で子どもを演じることができる十九歳というのはかえって才能なんじゃないか、などと思い始めてしまう。


 そしてもうひとつの驚きは、みんな私を子どもだと認定した途端にやさしく柔らかな口調に変わるのだ。これはもうひとくちに「子ども」といっても年齢的にかなり下なのではないかと思ってしまう。

 もし、これをお読みのかたで今後私と電話で話をする機会があるような人は、どうかアドバイスをお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?