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エッセイはじめました <夢を叶える>

 以前私が知り合いに「○○さんは、あまり現状を冷静に見ずに将来の話ばかりする。アルバイトがうまくいったときはどうしようとか、大きなお金が手に入ったときのこととか、なんだか夢を見すぎている気がする」というような話をしたことがある。そのとき、知り合いの方からは意外な返事が返ってきた。
「そこが○○さんのいいところなんだよ」
とのこと。詳しく聞いてみる。
「現実的なことを考えるのも大切だけれど、やりたいことや夢は人に話したり、言葉にしたほうがいいんだよ」
とのこと。ふむふむ。

 そこで私はその場ですぐに思いついた『夢』をその人に話してみた。
ナタデココでおなかいっぱいになりたい。
着ぐるみの中に入ってみたい。
億万長者になりたい。
……実にくだらないものや小学生みたいな夢だ。
「そんなのすぐに叶うよ。私も億万長者になりたいです」
と言われ、その日はお別れをした。ナタデココでおなかいっぱいになるのも、着ぐるみの中に入るのも、すぐに叶うのだろうか。うむむ、と思いながら帰った。

 後日。すごいことが起きた。なんと夢が叶ったのだ。私はなんと先日、着ぐるみの中に入ってきたのだ。

 先月の半ば、私の通う大学でちょっとしたイベントが二日間にわたり行われた。そのとき、大学の学生がつくったらしいゆるキャラの着ぐるみが登場した。一日目、かわいいなあ、と思って見ていたところ、すぐ近くで思いもよらない話を耳にした。
「明日は中に入るスタッフの人がいないをーだよな~今日だけになっちゃうかなあ。誰か、入らない?」
その言い方は笑っていて、「まあ誰もいないだろうけど」みたいなニュアンスが含まれていた。
「やります!私やります!入ります!」
私は考えるまでもなくその話に食いついて挙手をして立候補していた。その話をしていた人はやはり軽い気持ちで言っていたようで、私の食いつきようにとても驚いていたけれど、でも快諾してくださって、めでたく私は着ぐるみデビューを果たした。

 着ぐるみを着た私は大学の先輩に写真を撮っていただき、LINEのアイコンとなっている。私が言わなければ、私が中に入っていることはわからないが、それでもご満悦だ。

 私が着ぐるみのなかに入ることができたのは、あの日知り合いにその話をしたからかもしれない。そう考えると、ナタデココでおなかいっぱいになる日もそう遠くないかもしれない。

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