けいおん!

ここでは説明がない限り基本的にアニメ版についての感想とする。
また、2期である「けいおん!!」も区別せずまとめて「けいおん!」として話をすすめることもご留意頂きたい。
当然ながらメタ的には1期と2期は若干の体制や方針の違いがあるだろうし、作品としても学年の違いによる変化や中心人物の変化、何より「桜高軽音部」「放課後ティータイム」と明確に分けられているのだから区別した方が良いのだろうけれど、他の作品ではシリーズをまとめて話していたりもするし、何より4コマ漫画である原作「けいおん!」との大きな違いとしてアニメのフォーマットによって1本の線で繋がっていることからそう判断した。
一文が長い。

「けいおん!」はリアルタイム当時は作品としてはあまり評価していなくて、アニメ音楽をメジャーシーンに持ち込んだという功績や、同様にアニメ音楽でありながらメジャーシーンに乗り込み、奇しくも同じバンド系という関係にあった「Angel Beats!」のガルデモとの比較にオタク仲間と日夜議論をしていた程度だった。
実際に「けいおん!」の楽曲が邦楽シーンに与えたインパクトは大きかったと思うし、程よくアニメ感のある曲調やMVのようなEDムービーは新鮮で、間違いなく覇権アニメだった。
多分、「けいおん!」がなかったらアニメ文化が一般化してオタクへの偏見や迫害がなくなった今の日本は無いと思う。
マジで「ドラゴンボール」と「ワンピース」、精々「エヴァンゲリオン」くらいしかお茶の間では流れなかったんだよな……。

「けいおん!」の良さを知ったのは働きびとになってしばらくたってからふとリピートした時だった。
それまで「日常系アニメなんて」と思っていたが(今も思ってはいるが)、そこに描かれていたのはただのお気楽な日常ではなく、もう取り戻すことのできない、掛け替えのない日常だった。
「青春」という、人生における一瞬の煌めきだった。
彼女たちはプロを目指しているワケではないと思うし、本当にただただ高校生活を楽しむためだけに音楽をやっている。
友達と遊ぶ中での一つの共通言語にしか過ぎないのだ。
だから現実の軽音楽部出身の人の多くがそうであるように、学生のうちだけ楽器を触り、きっと就職したり結婚したりしたらサクッと音楽を辞める。
僕はこれまでそういったスタンスでの音楽をどこか斜に見ていたのだが、彼女たちの青春の思い出として「あの頃はめっちゃ楽しかったよね」と思い出を彩る要素としてそれがあるのだろうと思うと、確かに音楽である必要はないかもしれないが、その価値はとてもとても高い。
「けいおん!」は同じ学年の目線で見るものではなく、思い出話として見るものなんだと思う。

この記事を書いている時、リアルタイムで「ガールズバンドクライ」が放送されている。
少し前は「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」が放送されていた。
ガールズバンドが主題の作品はこれらの作品と同じように、ティーンエイジャーが持つ特有の脆さや苛立ちを「ロック」と組み合わせることで物語に昇華していることが多い。
「ロック」というジャンルとしても正しいし、その性質はぶつかることしか知らない少年少女との親和性も高いからドラマとしても活きやすい。
その上で、鬱屈した空気を感じさせない明朗さを持って、「ロック」でも何でもない、花の女子高生ライフを彩るだけの部活動を描いたこの作品が一般に向けては最も「リアル」な作品だと僕は考える。

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