犬夜叉

高橋留美子先生は天才である。
暑苦しい少年マンガに一陣の風を呼び込んだ立役者であることも勿論ながら、現代に至るまで一線級の人気を保ち続けている、もはや天才を超えてバケモノだ。
時代の流れもあれば流行り廃りもあるワケで、どんな一流マンガ家もヒット作を出し続けることは困難だ。
それを成し遂げているのだから末恐ろしい。

「犬夜叉」はそんなるーみっく作品で初めて僕が触れた作品である。
理由は単純で、小学生の頃にアニメがやっていたからだ。
みんなの性癖破壊装置として恐れられるるーみっく作品だが、当時はバトルファンタジーとして捉えていたからそうでもなかったが、大人になってから読み返すとウーンこれは性癖壊れますわと思った。
妖怪の活躍する作品は数あれど、「半妖」というどっちつかずの主役は面白いギミックで、闇堕ちも立場逆転も分かりやすい。
似たような設定だと「HELLSING」のセラスもどっちつかずの主人公ながら、人外に寄るという意味での闇堕ちは犬夜叉同様にするものの、人間に戻ることは無い。
この振れ幅が主人公・かごめの心情の振れ幅を大きくしていると思うし、物語の始まりである桔梗との拗れた関係に説得力があって面白い。
王道的な少年マンガの流れを踏襲しつつ、亡き桔梗と時代の離れたかごめとの三竦みと恋心がとても切なくて物語に淡さもあるのが良い。
この絶妙な配分はやはり天才だなと思う一方、個人的な理想に近いかと言われればそうではない。
少年マンガ特有のご都合主義もふんだんにあってノリと勢いで読み進めなければならない部分もままある。
バトルはもっと片手間にドラマを読めた方が個人的には好みだったりする。

準レギュラーぐらいのキャラクターにも勿体ないと感じることがあって、妖狼族の鋼牙なんかはその筆頭に思う。
現世のキャラクターたちもかごめのいない日常をもっと見たくなる愉快な顔ぶれだし、奈落の生み出した分身も退場が早いケースが意外と多く、名前はあるが1エピソードしか出番のないキャラや妖怪もただのモブと片付けるには惜しいものばかりだ。
裏を返せばそれだけ魅力的なキャラクターを作る才能があるワケで、「犬夜叉」だけに留まらず、何かしら刺さるキャラクターがどこかに出てくるからこそ性癖破壊装置なのだなと思ったり。

因みに僕のお気に入りは刀々斎。
飄々とした性格もさることながら、グリグリ目玉ですっとぼけた顔のデザインが大変良い。
……ん?
性癖を破壊した方のお気に入り?
まず逆髪の結羅だろ、シンプルに神楽も良いよね、阿毘姫も無様で可愛いね、それから……

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