BAMBOO BLADE

「BAMBOO BLADE」(以下「バンブレ」)は多分アニメの方が知名度は高くて、というのも当時はニコニコ動画といえばアニメコンテンツという時代だったから、オタクはみんなタイトルか楽曲か何かしらの形で見聞きしていると思う。
思えばあの頃は今と比べてアニメの本数も少なかったし、「ニコニコ動画流星群」を筆頭にアニソンのリミックスやらアニメ素材でのMAD動画が一大コンテンツだった。
正直な話、作品のコンテンツ規模で言えば「バンブレ」は小さくて、当時じゃなかったら作品にスポットライトが当たらなかったんじゃないかなと思う。

そんな「バンブレ」だが、他のスポ根モノと絶対的に異なるところがあって、それは主人公が競技に直接関わる学生ではなく、顧問のしがない教師ということである。
ズバ抜けて強いキャラクターが部にいることはいるものの、決して弱小校が全国優勝を目指す!みたいな物語ではないし、特にアニメは顕著なのだが基本的にコメディーライクになっている。
なんでそんな作品が今も僕の中で大切な作品になっているかというと、いま挙げた要素だからに他ならない。

僕は中学時代にバスケ部に所属し、県大会は行けるレベルの地元では強めの部で、僕自身も頭の中は部活かモンハンかというレベルで日常の中心だった。
強いは強いが強豪校ではなかったから、勝負の世界でしっかり勝ちを争ってはスプリット・セカンドしながらも全国を目指すことはなかった。
「バンブレ」は全国こそ目指さないが、勝負の世界に立つということはどういうことかがしっかり描かれていて、そして努力というものがどれだけ崇高なものかがそこにある。
女子高生の緩い日常とのギャップも相まって、勝負と努力の描写はとても切れ味が鋭く、先端は尖っている。
他のスポ根モノのような手に汗握る試合展開は無いが、剣道というスポーツの性質も相まって、その尊さを語るに置いては他のスポ根モノに決して劣らない。

そして何より、主人公が教師という目線だからこその胸打つものがある。
作中にも言のある、「子供の強さ」と「大人の強さ」だ。
明日のことも考えずに文字通りがむしゃらに物事に打ち込んでいたハズなのに、いつの間にか要領よくこなすようになっていることに気付いた。
正確にはそうなりつつあることに気付いた。
当時の僕は子供と大人の間の時期だったので、そうか今までの僕にあった強さは何なのか、これから得るべき強さは何なのかを「バンブレ」は教えてくれた。
その上で、「子供の強さ」を如何に失わずに過ごしていくかを考えるようになった。
「子供の強さ」を持ちながら「大人の強さ」を持ったら当然最強なワケで、ふと周りを見渡すと成功している大人達はみな「子供の強さ」を忘れずに持っている。

あれから十数年経ち、今の僕が「大人の強さ」を持っているかと言われると、まだまだ大人になりきれていないなと己の未熟さを少し恥ずかしく思う。
他方で、「子供の強さ」を忘れていないかと言われれば、年々あの熱を失いつつあることを自覚する。
どちらも持つのが最強ならば、どちらも持たないのが最弱なのは明白で、いよいよマズいぞ俺、もっと頑張らないとな、と身の引き締まる想いをするのである。
だからこそ、例え時代の波に乗れただけの小さいコンテンツだろうと、「バンブレ」は僕のバイブルの大事な一つなのである。

余談だが、「バンブレ」には「BAMBOO BLADE B」と「BAMBOO BLADE C」という外伝があるが、こちらはぶっちゃけどうでも良い。
内容もさることながら、本編の興が醒めるようなシーンもあり、ハッキリ言って泥を塗ったようなものである。
ついでに言うと、本編も1〜9巻と14巻だけが心に残っていて、間の巻は特筆することもなく、14巻を読まないとするならば読む必要がない、ただのマンガである。

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