鉄のラインバレル

オトコのコに生まれたからには、ロボットというロマンに誰もが一度は憧れる。
「鉄のラインバレル」(以下「ラインバレル」)は我々ロボットファンの言い方でいうところのスーパーロボット系に該当する、ファンタジーよりの作品だ。
そしてファンタジーよりのロボットモノにはお決まりの「カッコイイ」があって、「ラインバレル」にはそのお決まりがこれでもかと詰まった作品だ。

そういう言い方をすれば結構良さそうに聞こえるのだが、裏を返せばそれしか見どころはなく、物語としてはロボットモノの中でもちょっと物足りないなと個人的には思う。
幼馴染の3人の回想から物語は始まり、そのうちの親友が死ぬところから物語は動き出す。
そういう始まり方をした作品は大抵は崩れた三角関係がだんだんすれ違っていったり、亡くなった友人の影をどこか引き摺っていたりするものだが、薄情なことにその後はサッパリしたもので、あまつさえ残されたヒロインはモブへと成り下がる。
味方の裏切りがあったり、謎の第三勢力や独立勢力が現れたりするものの、伏線もなくポッと始まりパッと解決されるのも面白くない。
スーパーロボット特有のご都合主義の範囲ではあるものの、呼べばどこでも転移できるのに身動きがとれなかったり移動距離や移動時間の話が出てくるのも設定がボヤけて少し引っかかる。
現代科学の外から現れたロボットなのに平気で模造品が作られては量産されているのもちょっと頂けないし、意味ありげに人型のタイプの存在を出しておきつつその後は暫く触れられもしない。
……と挙げればキリがないほど惜しい点が出てくるのだが、一番辛いのはそんな感じの内容なのに地味に巻数が多いところだ。

物語面については兎に角評価は低いのだが、冒頭にもあったように燃えるシチュエーションには事欠かないし、ロボットもカッコいい。
勢いだけを読むのであればアリではあるかといった具合なので、逆に細かい物語は苦手な人にはオススメしたい作品だ。
特にリアルロボット系は顕著なのだが、ロボットモノは設定や話が複雑になりやすく、そうでないものはコメディー色が強かったりするので、そういう意味では貴重な作品だと思う。

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