ARIA

マッグガーデン誌で一番好きだったのは何かを考えると、「ELEMENTAL GERAD」か「ARIA」か……と思っていて、どちらにしろ最近のタイトルではなくて歳を取ったなと感じている。
ジャンルが異なるから甲乙はつかないのだが、「ARIA」はアニメ版も素晴らしいと思っていて、マンガで読むのとは違ったテンポというか、ゆったりした時間の流れと柔らかさがあって良い。
僕は音楽をしているからか音という要素は人より注意して鑑賞するのだけど、「音ってこの場面をこういう色付けできるんだ」と、BGMのパワーが身に沁みた。
淡く、されど彩り豊かな世界がより素敵で牧歌的になっている。

この作品をただの日常系と言うにはちょっと違うなと思う。
音楽のジャンルでいうとヒーリングミュージックとかそういうのに分類されるであろう、癒しが存在する。
しかし、キャラが可愛いから癒やされるとかそういうものではなく、むしろ物語としてはちゃんとキャラクターの成長があるし、フェアリーテイルというか、そんな回もあったりする。
コメディー要素も多いし、主人公・灯里がズバッと本質に切り込むこともあれば、逆に正論で諭されていたりもする。
要素だけ並べると至って普通の青春ファンタジーなのだが、そこに当てはめるのも違う気がする。
ヴェネチアをモデルにした「ネオ・ヴェネツィア」が舞台なのだが、ヴェネチアが持つあの独特の異世界感やスチームパンクなヴィジュアルが近未来感と融合しているあの世界観による影響は大きいと思う……が、それだけであのヒーリング感は説明できない。
舞台背景も含めて、キャラクターたちの言動も含めて、全部が絶妙だから生まれる心地よさなのだと思う。
天野こずえ先生の別の作品「あまんちゅ!」も舞台は現代で物語も別物ながら、同じニオイを感じるから、きっとこれが天野先生の天性のセンスなのだろう。
もしかしたら地の文というか、モノローグとかの文体だとか、そういった要素もあるかもしれない。

アニメは3期+映画だったと思う(他にあったのであれば僕が履修してないので教えて欲しい!)。
映画は執筆時点で割と最近やっていたというか、1〜2年ぐらい前にやっていたと記憶していて、映画館に足を運んだ時にたまたま上映のパネルを見かけて「えっ今ARIAの映画やってんの!?」と色々な意味で思ったものである。
一世を風靡するようなコンテンツではないが、絶景を見た記憶のように確かに心に残り続けている作品で、そしてそれは僕だけではないからこそ、細く穏やかに今も流れているのだと思う。
そのコンテンツの在り方がそのまま「ARIA」のようで、きっとまたいつか何処かでこの作品と逢う気がする。

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