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新幹線から見える「727看板」の設置場所はどこか

新幹線に乗って窓の外を眺めていると、ときどき「727」と赤文字で書かれた看板が目に入ります。一瞬で通り過ぎてしまうため、何の広告か分からない「謎の看板」と称されることもあるようですが、その正体は株式会社セブンツーセブンという化粧品メーカーの看板です。

新幹線から見える時間というのはほんの一瞬です。2~3秒といったところでしょうか。その間に多くを伝えることはできません。それなら、「727(セブンツーセブン)というインパクトのある会社名を知ってもらおう」ということでシンプルなデザインにしました。

727(アノ)看板の正体|看板物語|727 セブンツーセブン化粧品
セブンツーセブン本社工場(大阪府柏原市)
©Kansai explorer,2007,CC BY-SA 3.0

この727看板は、東海道・山陽・東北・上越の各新幹線の沿線に設置されていることが明かされています。ただ、具体的な場所や数については公表されていません。

――看板はどこに設置しているのでしょうか? 東海道新幹線以外にもありますか?

 現在は東海道新幹線のほか、山陽新幹線、東北新幹線、上越新幹線の沿線に設置しています。場所については視認性を最優先して決めていますが、具体的な地点や、総数は公表していません。  

新幹線の車窓に見える「727」看板のナゾ 商品みたことある?

この記事では、現在設置されている全ての727看板の場所を調べ、全国に何枚の看板が存在するのか調べていきます。

「車窓動画」を調査する

場所を調べるといっても、実際に新幹線に乗って全国の看板を探すとなると大変な労力がかかります。そのため、今回の調査では車窓動画を活用しました。

YouTubeには、新幹線を始めとして鉄道の車窓の様子を撮影した動画が数多く投稿されています。上の動画は東海道新幹線の新大阪駅から東京駅までの車窓を撮影した動画です。この動画を例として、看板の場所をどのように特定するのか順を追って説明していきます。

①727看板が映っている箇所を探す

車窓動画を初めから再生し、727看板が映るまでひたすら見続けます。

上記の動画(36:17頃)より

上の画像で、中央右にわずかに映っている白いものが727看板です。このように、動画内で映る看板は小さく見えるうえ、数秒ですぐに見えなくなってしまうため、見逃さないように注意深く見る必要があります。

新幹線の車窓動画は、長さが1~4時間程度のものが多く、最初から最後まで見るには時間がかかります。倍速再生を使ったり、トンネルの中を走っている時など看板が無いシーンは適宜飛ばしたりして、最初から最後までチェックします。

②場所の手がかりとなるものを探す

727看板が映っている箇所を見つけたら、今度はその場所を特定するための手がかりとなるものが周辺に映っていないか探します。

手がかりとなるのは、店の建物や看板、特徴的な建築物、道路、鉄道、河川など、地図や航空写真にも載っていて、動画と見比べた際に分かりやすいものです。見つけた看板の周辺や、その前後に通過した場所を重点的に探します。

上記の動画(40:59頃)より

上の画像では、中央に727看板が映っています。このとき列車が走っているのは、左上に示されている通り、米原駅を出て岐阜羽島駅に至るまでの区間です。

看板の後方に目を向けると、田んぼの奥に大きな工場があるのが見て取れます。画像を拡大して詳しく見ると、工場には「マキテック」と書かれた看板が設置されていることが分かりました。会社名は、場所を特定するうえで大きなヒントとなります。

③看板の設置場所を特定する
Googleマップを使い、②で見つけた手がかりを元に727看板の場所を特定します。

まず、列車が走っていた米原駅から岐阜羽島駅までの区間の周辺をマップ上で表示させます。この状態のまま「マキテック」で検索して、先ほどの工場がマップ内のどこにあるのか探します。

すると、工場の所在地は岐阜県不破郡垂井町であることが分かりました。ここまで来れば、特定までもう少しです。あとは、ストリートビューを使って周辺を探してみると、動画に映っていた727看板を見つけることができました。

以上の方法で、東海道・山陽・東北・上越の各線の車窓動画を確認していきます。


727看板マップ

調査結果をGoogleマイマップ上に示したものがこちらです。

2023年時点(調査日は1月から5月までの間、路線により異なる)で全国に設定されている727看板の総数は65枚でした。

各路線ごとのデータは以下の通りです。

東海道新幹線:27枚(海側14枚、山側13枚)

  • 山陽新幹線:20枚(海側9枚、山側11枚)

  • 東北新幹線:14枚(海側7枚、山側7枚)

  • 上越新幹線:4枚(海側2枚、山側2枚)

補足

  • 個人による調査のため、誤りや古い情報が含まれている可能性があります。

  • セブンツーセブン本社工場(大阪府柏原市)の近隣の山には、2枚組の727看板が設置されていますが、今回の調査では対象外としています。

【今日は7月27日ですね】 本市で“727”といえば、山からひょっこり見えるこの看板♪ 「新幹線の車窓から見える看板」としてもお馴染みの会社、「セブンツーセブン化粧品」さんの本社工場は柏原にあります。 そして今日にちなんだもうひとつの“7...

Posted by 柏原市役所 on Friday, July 27, 2018
  • 特定の都府県や区間によっては、看板が全く存在しないところがあります。静岡県内や京都府内は屋外広告物条例の規制のため、東北新幹線の盛岡駅以北や上越新幹線の上毛高原駅以北は積雪の影響があるため、727看板は存在しないものと思われます。

設置を見送る理由について同社は雪をあげた。(中略)看板を支えるための支柱が、雪の水分によって土の中で腐食することも考えられ、安全面を考慮した結果という。

北海道新幹線:沿線看板「727」はどこまで北上するのか | 毎日新聞

30年前の先行研究

ネット上を調べてみると、727看板について調べた方は私以前にも複数いらっしゃいました。ここでは、その先行研究といえるものを紹介します。

まずは、727看板をはじめとした新幹線沿線の「野立て看板」を調査した論文です。

著者である後藤春彦氏と松井勝紀氏は、全国の新幹線の沿線に存在する野立て看板の設置場所や設置数を調査し、分析を行いました。この論文では、看板の内容ごとの設置数も集計されており(PDF中「表一6」および「表一8」)、セブンツーセブンは「A社」の「SE化粧品」として掲載されています。

同論文より抜粋

それによると、727看板の設置数は、平成5年(1993年)6月時点で全国で99枚で、設置数は2位の「B社(=森下仁丹)」の「JI口内清涼剤(=仁丹)」を抑え全国1位となっています。

後藤氏と松井氏は、上記の論文の前年にも、東海道新幹線の沿線において同様の調査を行っています。

それによると、平成4年(1992年)11月時点で41枚の727看板が設置されていたようです(PDF中「表-5」)。論文では、看板の総数だけでなく、駅と駅の区間ごとに何枚設置されていたのかも調査されています(同「表-6」)。

同論文より抜粋。こちらでも設置数は1位。

東海道新幹線の沿線については、これ以外にも近年の報告が2つあります。

フォトライターの栗原景氏は、2017年3月の乗りものニュースの記事で「少なくとも32の看板を確認しています」と述べています。

交通系YouTuberの綿貫渉氏は、2023年6月投稿(撮影は同年1月と5月)の動画において、沿線の看板の総数は全27枚であるとしています。綿貫氏は看板の設置場所を事前に調べ上げ、実際に現地まで赴き撮影を行っています。

主な先行研究は以上の4つです。近年において、全国の727看板を網羅的に調査した方はいらっしゃらないようです。東海道以外の山陽・東北・上越新幹線についても、個別の調査は見当たりませんでした。


看板は減っている

「先行研究」の項では1993年時点の調査を紹介しましたが、30年が経過した今、727看板の数は99枚から65枚と、割合にして30%以上も減少していることが分かりました。

以前727看板が設置されていた場所(岩手県北上市)

とはいえ、30年前から今日に至るまでただ単純に数を減らしていったというわけではありません。ここ数年においても、新たに設置された看板が複数確認しています。増えたり減ったりを繰り返して現在の65枚という数になった、というのが実際のところなのです。撤去・設置の状況については、今後も注視していきたいと考えています。


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