見出し画像

ミャンマー情勢とスタンフォード監獄実験

 ミャンマーでの軍による虐殺行為が終わらない。ミン・アウン・フライン総司令官による指示なのか、それともすでに軍事態がコントロールを失っているのか知る術もないが、重要なのは世界中が現状を知っているのに制裁以外の対策を取っていないこと。すでに人権侵害が起き、日々死者の数も増えているのは周知の事実なのだから、治安維持軍を派遣するなどできないのだろうか?

 それにしても、なぜ軍はデモ隊に対して実弾を使ったり、無防備な市民に対して集団暴行を行ったりということができるのだろうか。様々な理由はあるが、基本的に市民対政府という構図は日に日に悪化することが避けられない。スタンフォードの監獄実験が今後の様相の説明になり得ると思う。

 スタンフォード監獄実験とは1971年にアメリカ・スタンフォード大学で行われた心理学実験である。新聞広告などで集めた普通の学生70名を看守役と受刑者役に振り分け、役職の与える心理的影響を調査した。

 結果はご存知の方も多いかと思うが、地獄の一歩手前のような状況に陥った。受刑者役は実験終了を求めてデモを起こし、看守役は受刑者役を暴力によってその行為を止めようとした。主催者すらこの実験の継続を求めていたという。

 最近では、実験結果の操作が行われていたのではないかという話しもあるが、それでも役職というのがいかに心理的に与える効果が大きいかはこの実験を持ち出さなくても想像できるであろう。

 今回のミャンマーの状況に当てはめると、デモ隊の声が大きくなればなるほど軍側はそれへの弾圧は強くなっていくことが予想できる。軍の兵士たちの役割は「治安維持」というよりは「手段を選ばず押さえつける」という心理にもはやシフトしてしまっている。最初は軍の中にもデモ隊に参加する者がいたという話しも聞いていたが、今はどうだろうか?監獄実験でも、最初は看守役と受刑者役はお互いに笑い合って、手錠をかけたりかけられたりして遊んでいたようだ。

 では、デモ隊が行為をやめれば良いのか?それはこの惨状を収める一つの手段ではあろうが、それでは結局、弾圧をすれば国際社会は独裁政権の誕生を許すというメッセージとなる。世界が民主主義を広めたいのであれば、やはり諸外国が積極的にミャンマー情勢に介入する必要があるだろう。「自由」「権利」という言葉は自国だけのものではない。それを望むすべての人が、国や人種を問わずに手に入れられる世界でなければならない。

世界を旅するTraveler。でも、一番好きなのは日本、でも住みたいのはアメリカ・ユタ州。世界は広い、というよりも丸いを伝えたいと思っている。スナップシューターで物書き、そうありたい。趣味は早起き、仕事、読書。現在、学校教員・(NGO)DREAM STEPs顧問の2足の草鞋。