宿題

小学校4年生の夏休み、一人で帰省したことがあった。
久しぶりに祖父と遊ぶのが楽しみだった。
祖父の家で荷物を出していると、祖父が「学校の宿題は持ってきたのか?」と聞いてきた。
「うん!」
私はよく考えずに返事をしていた。
私は解放感からか、テレビばかり観て過ごしていた。
祖父はなにか言いたげだった。
帰る日の前日、祖父が「ずっとテレビばかり観ていたな。宿題は全然しなかったじゃないか!」と少し怒った口調で言った。
「お母さんに手紙を書くから、ちゃんと渡しなさい!」
勉強熱心な祖父であったが、そんなことを言われるとは夢にも思わなかった。
その時、テレビでは時代劇のラストシーンだった。
「まごころ」という言葉が映し出されていた。
祖父は「テレビを観るなら、このような言葉を覚えていきなさい」と言った。
この手紙のことを最近、母親に聞いてみたが、まったく覚えていないということだった。

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