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再生ウール

前回尾州について書きましたが今回ももう少し尾州について書きたいと思います。前回、尾州の現状は産業が低迷して活気のない状態と書きました。そんな状況を変えるべくいろいろな試みをされていますが今回はそんな試みの中の1つをご紹介。

愛知県尾張地方と岐阜県にまたがる屈指の毛織物産地「尾州」で半世紀以上続く羊毛再生の伝統が環境意識の高まりの中再評価されてきています。天然繊維をリサイクルする再生ウールの生地は「毛七 (けしち)」と呼ばれ、海外では製品が完売したケースもあります。現在低迷している産地再生の願いを託しブランドとして売り出す動きもでてきました。

ウールは羊毛が原料の天然繊維。輸入に頼る羊毛は貴重で、尾州では古着や裁断くずなど廃棄される羊毛繊維を全国から集め、リサイクルしてきました。色や繊維などの割合で分別後、ほぐして原毛状態にし、補強用の合成繊維と混ぜ再び生地になる。毛七の由来はウールなどの天然繊維が七割、合繊繊維が三割の配合によるところからきています。これは最も風合いと強度が出る比率とされ、他の産地でも手掛けているが、紡績や加工などの各工程の専門業者がそろう尾州の毛七は品質が高いとされています。

ただ尾州の主力は新品のウール100%の高級生地です。毛七は低く見られて比較的安く、再生品と示すマークもありません。
しかし一宮地場産業ファッションデザインセンターによるとここ数年環境負荷の少ない衣服が世界的に流行。業界が再生ウールに注目しているとの事です。昨年米国から「環境に配慮した生地を」との要望を受け毛七を販売。米国の業者が2百メートル分の毛七をジャケットやシャツなどに仕立てて尾州の羊毛再生文化や歴史とともにインスタグラムで紹介。
さらに「サイセイヨウモウ  ケシチ 毛七」と書かれたロゴ入りのタグを付けたところ完売しました。リサイクルとは思えないほどの風合いで肌触りが良いと反響が大きく、国内外から十数件の発注が来ました。今後は毛七を尾州のブランドの一つとして売り出す考えとの事です。

もともとリサイクルの文化は尾州にも根付いていましたが、昔は再生品だと良く思われなかったものが時代が変わり今はリサイクル製品が評価に代わる。そんな時代の変化にも柔軟に対応していくことがとても重要。
尾州に根付いているエコの伝統で低迷している産地を再生できるか、世間の皆様も是非「毛七」に注目してみてください。

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