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日本で羊毛産業が定着しない理由

日本は羊毛原料のほとんどを外国からの輸入に頼っています。主な輸入先はオーストラリア、ニュージーランド、中国等ですが、日本にも少ないながらも羊がいます。では国産ウールの品質はどうなのか。よく日本のウールは外国産のウールと比べても品質において太刀打ちできないと耳にしますが実際はどうなのでしょうか。調べてみると東北大学でその研究が行われ研究結果が報告されていました。

羊毛の品質を評価する項目として毛重毛長毛色強度汚れ弾力
クリンプ夾雑物量(植物性ゴミの付着)・脂肪量(ラノリン量)の各項目で評価しています。
その結果は夾雑物の付着が多いため、飼育管理の方法を検討しなければならないとの結論でした。逆に言えば夾雑物を除くと外国産の羊毛とくらべても見劣りする部分はなかったという事です。国産羊毛はスピナーや手織り、染色家向けの用途には需要が有り、輸入羊毛と同等かそれ以上の価格が付けられています。国産羊毛を広げようと需要を大きくしてもそれに見合う羊の品種と頭数が飼育されなければなりませんが、日本の羊の頭数は現在約1、4万頭と輸入先の諸外国と比較しても非常に少ないです。

日本の羊毛産業が発展しないのは品質ではなく環境という事になります。
羊の毛を刈り取った後はその毛を洗う洗毛工程があります。1頭の毛を刈り取って洗う程度なら問題ないですが、何トン、何10トンもの毛を洗うとなると到底手作業では不可能です。実際に諸外国では洗毛工場がありそこで機械的に洗毛するのですが日本には洗毛工場はありません。公害問題・環境保護の観点から国内の洗毛工場はすべて廃止されました。毛を洗う為だけに外国に送って、洗毛後に日本に戻してという事がコスト面からもできる訳がなく国内羊毛産業にとって大きな問題となりその後発展はありません。
現在日本にいる羊の多くはサフォーク種という品種で主に食肉用です。

それでも、消費者が国産ウールの必要性や付加価値を感じてその対価を支払うのであれば品質の改良なども含め生産量も増えていくかもしれません。しかし現状はとても厳しく、そのハードルも高いのでどうしても手軽な輸入に頼ってしまっているという事です。

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