見出し画像

森バジル「なんで死体がスタジオに!?」ネット時代のテレビ局が舞台

テレビ局で事件が起きるという小説は昔からけっこうあった。でもどれもあまりピンとこない作品ばかりだった。
それらに比べてこの作品はかなり同時代的でピタッとくる感じがする。ずいぶんとテレビ放送の今を取材して描かれたのではないかと感じた。特に出てくる固有名詞がまさに今のテレビだ。番組名、人名、そして今の放送システムなどをなかなか丁寧に取材している。
一昔前のテレビは、大がかりで煌びやかで、ちょっと異世界感があった。それがIT、ネットのおかげで個人でも映像を発信できる時代になった。そしてテレビとネットはいつの間にか地続きになっている。ネットのスターがテレビに出演し、テレビタレントがYoutubeで個人的な発信をする。その両者をつなぐのがギャルや地下アイドルだったり、お笑いだったり、サブカルだったりする。そんな今の時代の俳優の等身に近いテレビがビビッドに描かれている。

ゴールデンの生放送。ゴシップ人狼ゲームを手がけるのはパッとしない若手プロデューサー。
重要な役回りのベテランが遅刻してまだスタジオに到着しない。
本番前、キャストには、番宣告知用の告知録りが行われ、そこで手際よくキャラクターが紹介される。
そんな中、ベテラン俳優の死体が発見される。ショー・マスト・ゴー!死体にはこのまま番組を続けるように指示を書いた台本が添えられている。

この小説は若い感性で描かれたフレッシュな作品なので、チョット時間の空いたときにサクッと読むみたいな読み方が合うような気がする。これは別に軽いとかという意味ではなく、構えないで読むというライトノベルの本質そのものなのだ。時代の要求にきちんと応えている一冊。若い世代のニーズが学べる一冊として大変勉強になった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?