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映画「みなに幸あれ」

これはジトっとして、ベタっとして、真綿で首を締められるような怖さの「田舎ホラー」だ。特に都会に育ってきた者には身に染みる怖さ、不気味さ満載だ。
都会で暮らしていた女性が田舎を訪ねる。祖父母や村人には、歓迎されるが、どこかみんな様子がちょっと変。そして家の様子もおかしい。
ただでさえ昔の木造の家は木が乾燥して音が鳴ったりするので怖い。しかしこの家は乾燥音どころではない、もっと大きな、そして異なる音がする。
祖父母の様子がおかしい。ちょっとボケているという感じではなく、行動自体が気持ち悪い。
「目に入れても痛くないくらい可愛い」と言いながら、自分たちの目に孫の指を突き立てようとする。これは最悪だ。

そしてこの映画が最も怖いのは、人の生活は「ゼロサム」であるという考え方だ。つまり「自分が幸せになる」ためには、「誰かが不幸せでいないといけない」ということ。
だから自分が幸せになるためには、誰かを不幸せにすればいい。そういう思考になってくる。怖すぎる。
そして主人公の女性が怖い。あまり見たことのない女優さんだが、超絶ピッタリのキャスティングだ。絶妙な田舎出身顔。ちょっと鈍臭い動き。演技が行き届いている。

コンテストで優勝した短編映画を長編にしたとのことで、残念ながらストーリーはあまりうまくない。その代わり映像描写に容赦がなく、そこがけっこう怖い。
配信で夜中に部屋で見ているのが怖い、そんな作品だ。

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