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フライングシアター自由劇場 第二回公演「あの夏至の晩 生き残りのホモサピエンスは終わらない夢を見た」@新宿村LIVE

舞台の稽古場として知られている新宿村に併設されている劇場。初めて行った。キャパが200ちょっとの観やすい劇場だ。長く続いた「オンシアター自由劇場」を1996年に解散して後、再び串田和美が新しいプロデュース公演を始めた。その名が「フライングシアター自由劇場」。

六本木から西麻布に向かって行くところに立つ硝子店の地下にホームシアターがあった「オンシアター自由劇場」の代表作はなんといっても音楽劇の「上海バンスキング」で、「クスコ」や「もっと泣いてよフラッパー」なども良かったが、圧倒的に「上海バンスキング」が優れた作品だった。特に余貴美子がリリーさんを演じるバージョンは秀逸。
そして何より吉田日出子の存在感が圧倒的。独特な歌唱による楽曲も印象的だった。
もう十数年も前だったか、脳機能障害を患った吉田日出子を励ますライブが吉祥寺の小さなライブハウスであった。自由劇場時代に仲間が集った温かいライブだったが、そこにも「上海バンスキング」の雰囲気が色濃く漂っていた。
ここまで一つの戯曲を極めてしまうと、その後が難しい。
そんな中、主宰の串田和美はエンタテインメントよりもプリミティブに演劇の原点回帰を選んだ。80を超えてまだまだ意欲的な舞台を作り上げる。素晴らしいバイタリティだ。

この作品は、シェークスピアの「夏の夜の夢」だ。古典中の古典に新しい解釈を振りかける。演じる役者は、元宝塚、コンテンポラリーダンサー、劇団の役者などが自由闊達に舞台を飛び回る。もちろん串田和美本人も道化として板の上に立つ。
美術はシンプル。紗幕のようにエアパッキンで舞台を包み、可動式の書き割り風の出入り口を移動させながら観客の想像力に任せた世界観で展開する。プロジェクションを使った演出はあるが、今の流行りに反して控えめだ。それもまた自由な想像を助けてくれる。
この作品、ルーマニアの演劇祭でも上演されるとのこと。誰もが知る題材だから、グローバルで通用する。これも一つの日本文化の発信だ。

劇場は地下にある。そこまでの階段には、この公演のために描かれた絵画が飾られている。そんなちょっとした贅沢も気持ちいい。
いま日本は経済的には貧しい国になってしまった。しかし文化的にはまだまだ豊かな側面が残っている。そんなところを感じられる公演だった。

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