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「映画 窓ぎわのトットちゃん」豊かな表現のアニメーション

原作の「窓ぎわのトットちゃん」はずいぶん昔に読んだが、もちろんほとんど忘れている。なのでほぼ何も知らない状態で鑑賞に臨んだ。
個人的には、なんだかアニメーションを劇場で観るのは苦手だ。配信でいいじゃないかという気持ちがある。
しかしそうでもない作品に出会うこともあり、たまには劇場でアニメーションもいいのではと思うこともある。例えば「この世界の片隅に」は試写室の小さいけれどもスクリーンで観られてよかったと感じた。そんな促品もある。
今回は配信で観たが、ちょっと後悔。こんな色彩のキレイな作品ならば、きちんと劇場で観ればよかった。

話は大きく二つ。
前半は、トットちゃんとちょっと障害のある友達との交流記。そして後半は、戦争へと向かう時代に流されていく人々の様。
何より舞台となる「トモエ学園」がいい。そしてそこを運営する先生がいい。そんな学校を信用し、子供を通わせる親がいい。
そして実写のドラマではなく、表現の豊かなアニメーションで映像化したというのがなによりいい。
戦争という悲惨な現実も、かなり柔らかく表現されている。
生きるとはどういうことか、そんなことを「死」という現実から教えてくれる。それも少しも押し付けがましいことはなく、自然に、そして気持ちよく教えてくれる。

残念ながらグローバルに向けて発信できる作品ではない、極めてドメスティックな作品だ。だがそれでもいい。全てのアニメーションが世界に発信されていく必要はない。
たまには日本の中で大切にされるアニメーションがあってもいいじゃないか。
そしてもしそれを気に入ってくれる世界の誰かがいたら、それはそれでいいのではないか。

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