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古内一絵「十六夜荘ノート」戦前〜戦中〜戦後、そして今を繋ぐ大河物語


書店にこんな激推しコーナーがあると、読まないわけにはいかない。

海外で亡くなった大伯母から屋敷「十六夜荘」を相続することになった会社員。しかしその屋敷はシェアハウスになっていて、格安の家賃でユニークな人々が住んでいる。
過去と現在をカットバックしながら展開していくストーリーは、割と王道ではあるが、しっかりと骨太。読み応えがある。この本を激推ししている書店があるのも納得の出来だ。
現代パートの主人公の男性サラリーマンもいい。会社ではできるサラリーマンだったが、意外な地雷を踏み、会社を辞める羽目となる。彼は交流のなかった大伯母のことを調べ始める。
そしてわかってくる意外な事実。このあたりのストーリー展開はまさにページタナー。謎解きは割とシンプルで気持ちよく納得できるのもいい。別にミステリではないので、変にこじらせていないのがいい。
読んでいて映像が浮かんでくるあたり、きっとどこかで映像化されそうだ。
挫折したサラリーマンの描写も実にリアル。このあたりも支持される大きな要因なのかもと感じた。

歳をとって時間に余裕ができ、色々な本に目を通すことができるようになった。せっかくならばいい本に出会って豊かで気持ちいい時間を過ごしたい、そんな気持ちに応えてくれるステキな一冊だった。
この本を読んでいて、なぜか樋口修吉の「ジェームス山の李蘭」を読み返したくなった。どこか似た匂いを感じたからか。本はあるはずだか、どこにしまってあるかがわからない。
と思って、電子で買おうかと調べたら、kindleUnlimitedで読み放題とか。便利でお得だけど、ちょっと悲しい気持ちになる発見だった。

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