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映画「このろくでもない世界で」見終わって陰鬱とした気持ちになる韓国ダークノワール

韓国には、格差社会からこぼれ落ちた最下層の下を描くディストピア・ダークノワール映画のジャンルがある。「パラサイト 半地下の家族」はその代表。そしてこのジャンルには傑作が多い。
この作品も、見終わって陰鬱とした気持ちにしかならない映画だが、間違いなく傑作。真っ当に頑張って生きていたら絶対に這い上がれない人生に差し込んだ一筋の光。それが、偽りの光だったことに気が付かず、すがってみればさらに地獄へと引きずりこまれる。

貧しい家庭に育った青年は、しかし正しい正義感の元、自分を持って生きている。しかしそこは正義などない村社会、正義感ゆえ、ふとしたことで人生が狂い始めてしまう。
そんな時、バイトしている店にいたヤクザとホモソーシャル的な出会いをする。これが偽りの光だ。
そこにすがった結果、絶望的な悲劇へと引き摺り込まれてしまう。

主役の青年は映画初主演、その義妹も同じく新人だ。そして監督も初長編だという。誰もが素晴らしい才能だ。そして脇を支えるヤクザの役者も繊細にして大胆な芝居で素晴らしい。
韓国映画が優れているのは、このような才能が次々に出てくるところ。国家が年月と金をかけて映画文化を世界に通用する武器に仕立てるという作戦が見事に結実している。これこそ、極めて戦術的な国家戦略。

それにしても、韓国映画の闇が深いのも事実。
堕ちても堕ちても、まだ闇の底には辿りつかない。
7月26日公開。

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