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#118 子どもたちから気づかせてもらったこと

 教職経験も長くなり、ベテランと言われる年代になるまで、多くの先生方は少なくとも同じような経験をしていると思います。(そうでない先生ももちろんいると思いますが)
 これから話すことは、あくまで私の教員生活を振り返ったときの反省です。誰かを責めているわけではありません。

 ①挙手している子どもだけを指名して授業を進める先生

 手をあげている元気な子どもを指名したいものです。だれも手が上がらなかったらつらいものがあります。ですから、先生は挙手している子どもを見ると、うれしいものです。少なくとも自分の問いかけに真っ先に反応しているわけですから。また、子どもたち全員の反応があるまで待てないということもあります。若い先生において、子どもたちの無反応、沈黙ほど怖いものはないと思います。

 ②授業を自分の思いと同じ子どもを指名して、学習をつないでいく先生。

 先生方がしばしば口にする言葉があります。授業後に「○○くんが発言してくれたので」「私が言ってほしいことを○○くんが発表してくれたので」・・・そうですね、「してくれたので」という考え方です。授業が先生の思い通りに進められるような子どもたちの発言を歓迎します。学びが滞ることが怖いですね。
 参観授業になると「無事に終わりました」という先生の声。この「無事」とはどういうことなのでしょう。

 先生の助けを求めているのは誰ですか?発表をよくする子たちですか?発表したくても自信がなくて手を上げられない子たちであるはずです。手を上げている子ばかりに目を向けて、その子たちの発言で授業を進めていくから、「学力差」がどんどん広がっていってしまうのです。先生は授業の中でもっとサイレントマジョリティーの子どもたちの声なき声を聞いてスポットを当てなくてはいけないはずです。

 ③問題をだしていれば子どもは学習し、ついてくると思っている先生

 クイズのような質問で、子どもたちをひっぱる先生がいます。子どもはクイズを歓迎します。時には、それも必要です。「問題をだして子どもが答える」その活動を続けていたら、自然と子どもたちは学習するようになると錯覚しています。しかし、それでは先生が、問題をださなければ、子どもたちの学びも止まってしまいます。子どもたちが自分の力で学んでいないと、そのようなことが起きます。

 ④教室に学習物を掲示すれば、子どもは学習すると思っている先生

 掲示物は大切です。しかし、教室の掲示を眺めてみると、教室を装飾するための掲示、殺風景にならない程度の掲示、今、学習していることを知らせる掲示、時々、誰に向かっての掲示か、わからない掲示物を見かけます。今の学習を発展させるための掲示、これから学習する予告のための掲示、などなど。掲示物は子どもたちにとって学習環境のひとつです。ですから、意図的に掲示物を張り替える必要があります。しかしどの掲示物にも「賞味期限」があるのです。外すときが大切です。掲示するときに、いつ、外すかを考えてはります。掲示物は、学びを刺激する上で、一定の効果があります。ところが、時々、教室中いっぱいに貼っていることに満足している先生もいます。
 研究授業の時、授業される先生の教室は華やかなものです。思わず、ふだんはどうしているのか心配になることがありました。

 ⑤学習の仕方は子どもが自然に覚えていくと思っている先生

 学び方は、先生が指導の手を入れなければなりません。もちろん、自然に子どもたちが覚えていくものもあります。それは、過去の学習経験から学んだものです。しかし、学び方には、工夫と新鮮さが必要です。学習意欲を膨らませていくためには、頂上にたどり着くための多様な道を教えていかなくてはいけません。

 上記のような先生に受け持たれた子どもたちの状況を観察すると、

  1.  自分からやろうとする自発心や創造力、自分の考えを発揮しようとしない子ども。

  2.  授業は先生の言うことをだまって聞いておけばいいと思う子ども。

  3.  先生の口伝えの知識を収納しておけばいいと思う子ども。

  4.  授業よりもテストで良い点数をとればいいと考える子。

  5.  先生から言われたことだけをすればよい、だから宿題をしたよと言う子ども。

  6.  授業はできる子だけが参加すればいいと考える子。

  7.  自分が勉強しなくても、教室での学習には影響ないと考える子。

  8.  できない者はじっとして、目立たないようにして耐えていればよいと考える子。

 先生方にはそんなつもりはなくても、このような子どもたちを多く生み出していませんか。

 これらは私が子どもたちから気付かせてもらったことです。先生から子どもたち一人一人には目が届きにくいところがあります。しかし、子どもから先生はよく見えてるものです。先生の言葉、その向こうの表情から読み取れるものを彼らは察知します。子どもが先生の気持ちを忖度しています。先生が質問すると、先生の望む答えを発表します。
 そのような子どもたちはかげで「疲れるわ」と言っています。

 試しに、授業参観をした時、先生の言葉や指示に対する子どもの表情を見てください。発言したあと、子どもたちがちらっと見るのは先生の表情ですから。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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